Ⓒランページ
「待てばよかったのに、待てないばかりにあなたは大事な歯を失うのよ。それも激痛を伴って」
クワガタが思いっきり前あごを天に振り上げた。挟まった小さな白い奥歯が天井の明かりで光る。
「いい? あなたはこれからここではない世界に戻ることになる。すると、さっきみたいな選択肢を迫られることになるでしょう。どっちを選べばいいかはわかっているわね? 焦ってはダメ。待ちなさい。それが激痛を伴わない唯一の方法なのよ」
激痛から解放されたキミは、なんだか頭がぼんやりとしてきて、そして。
「あなたはあの男にはとても勝てない。なら、勝てるにはどうすればいいと思う?」
黒猫のその声を最後に、完全におかしな世界からシャットアウトされた。