Ⓒランページ
トーストを1枚。マーガリンを塗って食べ、コーヒーで流し込む。
それから着替えて、歯を磨いて、化粧をする。
いつもの準備が完了したキミは、玄関の扉を開け、現実の世界へ足を踏み入れる。
季節は青。川沿いの桜、昨夜降った雨でアスファルトにへばりついた花びらがピンク色した水玉模様に見えて綺麗。
それなのに、ボランティアの人だろうか、竹ぼうきを乱暴に振って、剥がそうとする。
「興が冷めるなあ、まったく」
とキミが不意に発した言葉がボランティアの人の耳を揺らす。ヘラヘラした顔で、キミにお辞儀をするボランティアの人。
居たたまれなくなったキミは、足早にその場を去る。興は確かに冷める。でも今からキミが通うところに、このボランティアの人よりも誰かの役に立つ、そんなものがあるだろうか。いや、きっとない。