Ⓒランページ
キミはああ、なるほど。ラブストーリーのことかとなんとなくで納得した。
「なるほどね。ボーイミーツガール。もしかしてだけど、『はつ恋』もボーイミーツガールなの?」
「ツルゲーネフの?」
「そう。ツルゲーネフの」
「あれもまあボーイミーツガールだろうね。というかキミはツルゲーネフを読むの?」
「ううん。今日の放課後、たまたま書店に行って、たまたま手に取っただけ。まだあんまり読めてない」
男の全身黒コーデのアバターは「うんうん」とわざとらしく頷くアクションをした。
「カフカは好き?」
「何だっけ」とキミは思い出そうとする。
「朝起きたら虫になってるやつ」
「『変身』?」
「そう、『変身』。それは読んだよ」
「じゃあ、『城』は?」
「それはまだ読んでない。というか分厚くてどうしても敬遠しちゃう。面白い?」
「正直俺はあんまり好きじゃなかった。未完の作品だしね」
「そうなの?」
「結構多いんだ。フィツ・ジェラルドの『ラスト・タイクーン』もそう。あれも未完なんだ」
「フィツ・ジェラルド? って人も有名なの?」
「『ベンジャミン・バトン』や『グレート・ギャツビー』を書いた人だよ」
「『ベンジャミン・バトン』は聞いたことある。映画になってたよね」