Ⓒランページ




それからキミと男は本の話で盛り上がった。


キミはミステリーやサスペンスが好きなことを話した。対する男は、ミステリー・サスペンスはあまり好きではないと言った。


「なら、太宰治は?」とキミが聞くと、男は「ほとんど読んだ」と言った。


「谷崎潤一郎は?」とキミが聞くと、男は「『痴人の愛』や『細雪』、『春琴抄』は読んだ」と言った。


「川端康成は?」とキミが聞くと、男は少し間を開けて、「『雪国』で挫折した」と言った。


キミも好みの作家を話す。アガサー・クリスティーやチャールズ・ディケンズが好きなこと、『大いなる遺産』が愛読書であること、『クリスマス・キャロル』があまり好きではないことまで。


男はミステリーやサスペンスが苦手だと言ったにもかかわらず、キミの話を楽しそうに、時には質問をしながら聞いた。男はキミの話にほとんど同調していたが、すべてがそうではなく、時折「確かにそうかもしれないね。ただ、俺は」と自分の意見も言った。


久々に会話のキャッチボールができたような気がしたキミは、男と話すのが楽しくて仕方がない。時間はあっという間に0時を越え、男に「そろそろ眠いんじゃない?」と聞かれた。そう聞かれると少し眠く、あくびが出たがキミは「ううん。大丈夫。あなたは?」と男に聞いた。男も「大丈夫だよ!」と言った。二人のアバターが笑うアクションをした。



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