Ⓒランページ




そのことをもっと早く知っておけばよかった。


キミはそう思いながら、放課後を迎え、下駄箱でローファーに履き替える。


ちょうどその時、廊下を慌ただしく駆けていく女子たちがいて、横目で見ると、ダンス部の子たちだった。


伏し目がちでキミは足早に校舎を出た。


ダンス部を辞めてからもう6ヶ月経つ。辞めた原因は些細な、本当に些細な人間関係の問題。


ある日を境にキミは急に周りの部員から無視されてしまう。中には話しかけてくれる人もいたけど、露骨な無視はキミを動揺させた。


振り付けの確認をしようとしても、周りはキミを無視する。「どうして無視するの!?」と聞いても答えは返ってこない。


まるで壁に向かって話しているような感覚。一人声を発して、誰にも届かず自分に返ってくることの空しさ。


悩んだ末、キミは顧問に相談に行く。女性体育教師の顧問は、キミの話を聞き終えた上で、「どうして無視されるのかその子たちに聞いてみたの?」と言った。


「聞きました」


「それでなんて言ってた?」


「その質問も無視されました」


「そう。じゃあ、きっとあなたに問題があるのね。あなたがあの子たちに対して何か気に障るような言動をしたのね。先生が高校生の時もそうだったんだけど、部活にムカつく人がいたのね。それは話したくもないくらいムカついてて、先生無視してたの。先生思うんだけど、無視するのって必ずしも悪いことじゃないと思うの。無視はいわば一種の意思表示なわけでしょ? 社会に出れば当然、話したくない人、かかわり合いたくない人もいる。それなのに、無視はいけません、ちゃんと話しましょうっていうのは、いくらなんでもフェアじゃないような気がするの」


キミは顧問のその話を聞いて、幻滅し、大好きだったダンス部を辞めてしまった。



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