Ⓒランページ




「それでも俺はキミのことが好きになった」


男のその言葉で初めてキミは全てを理解した。


「会ったこともない。どんな顔をしてるのかだってわからない。でも俺はキミのことが好きになった。理屈では語れないところに魅力を感じたんだと思う。結婚するならキミしか考えられないし、キミに今振られたら俺は一生恋愛なんかしないんじゃないかって思う」


キミは黙って聞いた。文字から感情が溢れて、抑揚をつけてキミに語りかけているみたいに思えて。


文字は聞こえる。


「だから、こんな俺でもよかったら付き合ってほしい」


突然の告白にキミは戸惑ったが、それよりも勝ったものがあった。


それは彼の気持ちに対する喜び。


ここまで自分のことを好きになってくれた人が他にいるだろうか。そしてこの先現れるだろうか。いやきっと現れない。それに彼はちゃんと結婚のことまで考えてくれている私との将来をきっと思い描いてくれたんだ。100%鵜呑みにはしていない。でも、多少なりとも考えてくれていることが嬉しかった。


しかし、そんなこと以上にキミは思った。いや思ってしまったと言うべきか。



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