Ⓒランページ
中学に入ると、誰かと何かを話すことですらつまらないものに思えた。
一応小学校からの流れでサッカー部には入ったが、チームメイトとは付かず離れずを徹底し、親友というものを作らないようにした。
テストの点数もこの頃になってくると、上手い具合に平均点を採れるようになった。もちろん、クラスの少数しか正解しない問題なんかもあって、完璧に平均点を採れるわけではなかったが、それが逆に面白く、自ら進んで勉強をすることも増えていった。
しかし、やはり世界というものは面白い。面白いからこんな力を持った僕でも、 腐らず生きていけているのだと思う。
中学2年のクラス替えで、僕は生まれて初めて心を読めない男に出会った。彼は浩二といった。野球部で僕と帰る方向が同じ男子。
心を読めない男だからどういう男かと注意深く観察していたが、浩二は驚くほど普通の男子だった。普通の男子と同じように、制服を着崩したり、恋愛をしたり、髪にワックスをつけたり、授業中にセーターの袖にイヤホンを通して音楽を聴いたり。
でもどう頑張っても心が読めない。全く読めないのだ。僕は親友になるならこういう男子がいいと思い、浩二と積極的に話をするようになった。浩二も僕のことを受け入れてくれて、いつしか一緒に登下校をするようになった。
そういえば一度、浩二を殴ったことがあった。
あれは中学3年の時で、浩二が当時付き合っていた女子から、「最近浩二が冷たい」と相談を受けていた。
相談内容は要約すればこの一言で収まるのに、その女子はベラベラと小1時間かけて説明した。僕は自分で言うのもなんだが、人の話を聞くのが上手いと自負している。上手いと自負するようになったのは多分、この頃からだったと思う。
ただ、困ったことに浩二がどういう理由で彼女に対して冷たいのか、それが理解できなかった。これは僕にとって初めての経験だった。