Ⓒランページ




このアプリでは画像を送ることができない。だからお互いの顔の写メを送り合うことはできないわけで、キミは彼が一体どんな顔をしているのかわからないまま、6月を迎えた。


ジメジメとした梅雨。徐々に雨の日も増え、朝から何となく気分が乗らない、まるで遅れてやってきた5月病のようだった。


それでも家に帰れば、彼がいる。キミはそれをモチベーションに何とか頑張った。中間テストもそれなりの点数を採り、協調性を存分に発揮しなければ成り立たない学園祭も見事やり切った。男に「今日、学園祭だったんだ」と伝えると、「そうなんだ。それで、キミのクラスは何を売ったの? と聞いてくれた」


「かき氷」


「かき氷? 学園祭で?」


「ねー、やっぱそんな反応になるよね」


「普遍的なもので言えば、そうだな……チュロスとか、たこ焼きとか、そういうもんじゃないの?」


「他のクラスではタピオカ売ってるところもあったよ」


「タピオカかあ。俺嫌いなんだよな。あれ、美味しいか?」


「美味しくないと思う」


「だよね。なんか濁った水にカエルの卵入ってるようにしか見えない」


「カエルの卵(笑)」


こんな調子で、キミと男は順調に愛を育んでいた。傍から見れば「愛?」となるかもしれないような会話。でもいろんな形があるのが愛で、そこは若干歪な方がいい。その証拠にハートの形は真ん丸ではなく、歪な丸と丸が合わさってできたものなのだから。



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