Ⓒランページ
「それも考えてみなさい?」
さっきとは打って変わって柔和な口調の黒猫。キミはまた考える。
交通費くらいはなんとかなるかもしれない。問題は滞在費。つまりはホテル代。1泊どれくらいするものなんだろう。5000円か、1万円か。そもそも高校生が一人でホテルなんて泊まれるのだろうか。わからない。でもなるべくならホテル代は安く抑えたい。
どうすれば? タダで泊まれるホテルがあれば……。でもそんなホテル、あるだろうか……?
「ホテルって概念を取っ払うのよ。別にホテルじゃなくてもいい。屋根があればいい。屋根さえあれば、たとえ一人じゃなくてもいい」
屋根があれば? 一人じゃなくていい? 東京……。あ、そうか!
「やっとわかったようね」
キミは頷く。それを見届けた黒猫は、ふわっと宙に浮き、それから蜃気楼のように消えて無くなる。