Ⓒランページ
9、思ったよりも幼くないですね。
キミの将来の夢は、特になかったと記憶している。
家から近い大学へ行き、適当に学んで、そこそこの会社に入って。そんなことを考えていたんじゃないだろうか。
両親から志望校を聞かれても県内にある無難に入れる私立大学を挙げた。両親は特に何も言わず、「まあ近いもんね」とキミの意見を聞き入れた。5月のことだ。
あれから1ヶ月。わずか1ヶ月だ。キミは両親に「東京へオープンキャンパスに行きたい」と頼んだ。
「どうして東京なの?」
と母親が言った。いつもは無口な父親も、
「福岡ならわざわざ東京まで行かなくていいんじゃないか?」
そう遠回しに反対した。
キミはこうなることがわかっていた。だから、秘策を用意した。