Ⓒランページ
そうと決まれば、あとは宿探しだったが、キミの宿はもう決まっていた。
いや、キミはきっと決まるかな、どうかなって不安だったのかもしれないね。でも、キミが東京に行くよう仕向けたのは他ならぬ僕であって、僕はいわばキミを招待した形になる。当然、宿だって用意している。
だからキミがあのアプリを開いて、僕ことケンに「東京の大学へオープンキャンパスに行くんですけど、泊めてくれませんか?」と頼んできた時、僕は快く引き受けた。
「ホントですか?」
「ホントだよ(笑) まあ汚い部屋で申し訳無いけど」
「そんな。全然大丈夫ですよ!」
「でもホントに汚いよ? 僕、掃除するの苦手だから」
「どんなに汚くても大丈夫ですよ! 私の部屋も結構汚いですし」
今こうして思い返すと、なんて無駄なやりとりなんだろうと虫唾が走る。だってそうじゃないか。僕は綺麗好きで、部屋の隅々までちゃんと行き届いた掃除をしているつもりだ。
毎朝6:00に起きて、30分で着替えや食事、歯磨きを済ませる。それから1時間かけて部屋の掃除。それを毎日やっている。
対するキミの部屋だって綺麗だ。キミの目を通してちゃんと確認してある。キミには物を収納する癖がある。物が見えるのが嫌いなタイプだ。
いつだったかキミが友達を家に泊めた時に、友達がキミのベッドで水をこぼしたことがあったよね? その時友達は「どうせすぐ乾くから」といって拭かなかった。キミの心は「いや、拭けよ!」だった。僕もそう思った。カビになったらどうするんだ。というかそもそも、人のベッドの上で水を飲むなんて、一体どういう神経をしているのか。
そこはいい。とにかく僕とキミは綺麗好きなのだから、こんなやりとりは不毛だ。でもついやってしまう。綺麗だとかカッコイイ、可愛いだとか、モテるだとか、頭がいいだとかは結果として見えているものなのに。謙虚なところは日本人特有のものなのか、世界共通なのか。僕にはわからない。