Ⓒランページ
ところで、キミが東京に降り立ったのは、これで二度目だったね。
一度目は、修学旅行。一年前の話だ。キミの通う高校の修学旅行先がそれだった。朝、重たいスーツケースを抱えながら学校に集まって、バスに乗る。行き先は小倉駅。そこから新幹線に乗って新横浜で降りる。
そこからまたバスに乗って、中華街へ。束の間の自由時間。キミはスマホの充電器を忘れて、激安のディスカウントストアで激安の充電器、それもコンセントに差すと、ビーッと微かに音が鳴るタイプの充電器を買った。
それからバスでベイブリッジを渡りながら、しゅうまいの入った弁当を食べて、ミュージカル鑑賞。有名な劇団で有名なミュージカル。オープニング、席の後ろから動物が来るのに驚いた女子がキャーッと悲鳴を上げたのを、キミは旅の疲れもあってなのか、腕組み(やっぱり親子だ)をしながら睨みつけていたね。
ミュージカルが終わって、浅草にあるホテルに宿泊。3人部屋で同室の二人がずっとミュージカルごっこをしていて、キミはそれを見ながら笑った。もちろん、心は笑っていない。キミは「修学旅行はただの旅行じゃない。授業の一環だから、移動中は寝ないように!」という先生の言葉を律儀に守っていたから、くたくたで、一刻も早く寝てしまいたかったのだ。