Ⓒランページ
その後も旅は続き、最後はありきたりかな、テーマパーク。
これは完全な余談なんだけど、キミは覚えているかな? そのテーマパークで黄色のパーカーに黒のチノパン、黄色のスニーカーを履いた男性から、
「よかったら連絡ください」
と、連絡先の書かれた紙を受け取ったよね? 実は彼、僕と同じ専門学校に通っていた同期なんだ。卒業して彼は今、キミが修学旅行で見たミュージカルの劇団に所属しているんだ。アンサンブルだけど、頑張っているらしい。たまに一緒にお酒を飲む仲なんだ。
でもキミはその連絡先の書かれた紙をどうしたか覚えてる? 友達に渡したんだよ。「さっき変な人からこれ渡されたんだけど、これ使って何か面白いことできないかな?」ってね。
そしたら、友達の一人が、「晒す?」と提案した。でもキミは首を縦に振らなかった。ただ晒すだけじゃ面白くない。もっと面白いことをしようと言ったんだよ。
そこで思いついたのが、キミが使っているあのアプリだ。あのアプリはアバターを使っていろんな人と交流ができるアプリで、キミはそこで晒そうと考えた。
修学旅行の帰りの新幹線で早速登録して、公園のベンチに座っていると、一人の男のアバターが話しかけてきた。何の捻りもなく下ネタを使う30代の農業の仕事をしているおじさんで、キミは友達と一緒になってゲラゲラ笑いながら、適当に話を合わせた。そして連絡先を聞かれたところで、キミは僕の同期からもらった連絡先を教えた。
同期やおじさんに同情するわけじゃないし、キミを最低だとも思わないけど、そういうことを思いつけるのは、ある種の才能だと僕は思う。その才能を最大限に発揮したからこそ、僕にああいうことができたんだなって思う。