Ⓒランページ
「どうしてケンさんは夏なのに、長袖のシャツなんか着てるんですか?」
「日焼け対策」
「あー、肌白いですもんね」
「冗談だよ」と笑ってみせて、
「肌を露出するのがあんまり好きじゃないんだ」
「どうしてですか? せっかく白いし、細いのに」
「だからだよ。夏なのに白い肌、しかもその腕は細い。病人ではあるんだけど、これだといかにもって感じがする」
「病気持ってるんでしたっけ?」
「言わなかったっけ?」
「あー、そういえば言ってた気もします」
キミのスーツケースにかかとが当たった。かかとに当たって跳ねたスーツケースが水たまりで跳ねる。「あ、ごめん」と後ろを振り返ると、キミは「あ、いや、全然。何ならもっと蹴っちゃってください」と訳の分からないことを言った。
確信をついた。
「緊張してる?」
「え? そう見えますか?」
「そうにしか見えないよ」とまた笑ってみせて、
「明日はもっと緊張しそうだね」
キミはわかりやすく下を向いて照れた。初めは耐えようとしているようだったけど、我慢できずに、顔をくしゃくしゃとさせて、「もう、何でそんなこと言うんですかー!」と抗議した。
ああ、めんどくさい女。