Ⓒランページ
駅から家までの道中、僕は荷物が多いと迷わずタクシーを使う。
ワンメーターではたどり着けない距離。それこそ今回はタクシーを使うべきところだけど、あえて使わなかった。
道中にショッピングモールがある。そのテナントの中にカフェがあって、事前に一緒にそこでお茶をする約束をしていた。僕もまだ行ったことがないカフェだった。
ところで、僕は喫煙者だ。日に1箱は吸う。もちろん、キミはそんなこと十分過ぎるくらい知っているだろうと思う。キミの中にある僕のイメージの一つにもなっていると思う。
タバコ談義をさせてもらうと、僕は彼女が変わるたびにタバコの銘柄を変えてきた。別れた後、その銘柄のタバコを吸っていると、嫌でも当時付き合っていた頃の記憶が呼び覚まされて不快になるのだ。
でもこれは記憶と匂いはリンクしているからなんだと思う。確証はないけれど、きっとそうだ。記憶と匂いはリンクしていて、嗅ぐことで思い出せることもある。
現に僕は、タバコを吸っていると思い出す、ほろ苦い記憶がある。ほろ苦いかどうかなんて、主観でしかないから聞く人によっては、「いや、それはなんか悲しい」だとか、「どうしてそうする必要があったの?」と疑問を呈するかもしれない。
これはキミにも言ったことがなかったけれど、僕の父は小説家だった。