Ⓒランページ




名前はここでは伏せる。ミステリーやサスペンスを好むキミに言ったってどうせわからないだろうし、父の本が書店に並んでいることはほとんどないし、その多くは絶版になっている。


ともかく、厳格な父で、しかし大変な酒好きで、子供の頃は酒に酔った父によく殴られた。


父は朝6:00に起きる。それから30分で着替えや歯磨きを済ませると、7:00までの30分、新聞を読む。


7:00から執筆。途中昼食や取材、編集との打ち合わせなんかを挟み、19:00に仕事を終え、風呂と食事を済ませる。


そして、僕の部屋に一升瓶を持って現れる。僕は父が来ると、宿題をしてようが、明日のテスト勉強をしてようがそれを中断して、こたつ机の前に父が座る座布団を用意しなければならなかった。


父が座布団に座ると、僕は対面に座って、ノートと筆記用具を用意して、父の言葉を待つ。


「ビニール袋、新月、角砂糖」


僕は父が出したその3つのワードを使って、掌編の小説を書かなければならなかった。最低4000字。400字詰め原稿用紙10枚分。それを毎日。



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