隠された日記
14年前




事の始まりは、1981年の夏。

清水康則は、ある小さな株式会社の部長を

していた。

その会社の名前は、「キューブミニット会

社」。

昨年の1980年から1981年にかけて、日本で

はルービックキューブが大ブームとなり、

おもちゃ製品を作る会社の生存競争が始ま

っていた時代だった。



キューブミニット会社は他より規模

が小さかったため、その生存競争の離され

るか離されないかのすれすれにいつもい

た。

社員の給料も決して高くはなかった。

だが、康則はそれで良かった。

なぜなら、自分の息子が幸せそうだったか

らである。

清水康則の息子、清水秀樹は、生まれつき

身体に障がいがあり、どこに行っても人に

特別な目で見られがちであり、そんな息子

の事を知った時も康則は大変不安を抱えて

いた。

1970年代。まだバリアフリーなどの福祉が

あまりなかった時代。

10歳頃まで、秀樹は悩みに悩んだ。

人と同じ事が出来ない自分が嫌になり、何

度も泣き叫んだ。生きる希望を見つけられ

ず、時に「死にたい」と自殺を試みた程だ

った。
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