隠された日記




「フィロソフィアム」の名前が出た途端

に、老夫婦のお婆さんの方が「まあ!」と声

を上げた。

「ど、どうかしましたか?」

「今だから言います。被害者の大塚紗矢

が、「フィロソフィアム」の社長令嬢だと

いう噂は、、噂ではなく、本当の話で

す。」

「あ!」

そういえば、初めて事件の存在に気付いた

時に見た夢で、最後にルービックキューブ

が出てきた事を思い出した。

忘れかけていたが、あれも事件に関係して

いたのだ。

フィロソフィアムという会社は、ゆゆも良

く知っていた。少し店に行けば必ずその製

品が売っている。ゆゆも幼い頃何度かそれ

を買った。

紗矢さんが、大手会社のお嬢様、、、

バスに乗って見つめていた、あの凛々しい

笑顔を思い出した。

「お姉ちゃん、、」

美樹子さんも、それに驚愕して俯いている

ようだ。

「会社側は、必死にその事実を隠蔽するよ

うに言ってきた。大手会社の令嬢が誘拐さ

れたとなると、世間体が悪いし、とんだ騒

ぎになってしまう。」

「そんなお嬢様を、、ああ!」

清水康則の母は、手で顔を覆い、自分が誘

拐した張本人かのように泣き始めた。

清水康則は、目線を上げず、虚ろに俯いて

いるだけだ。

「とりあえず、続きを話せ。なぜ紗矢さん

を誘拐したのか。」

清水康則の父は、まるでとんでもない困難

にあっているかのような目付きを見せつけ

る。

清水康則は再び口を開いた。
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