隠された日記
そんな日々と社員の結束の甲斐もあって、

月別の興行収入は少しずつだが確実に上昇

していったのだ。

新たな会社からの契約や打ち合わせなども

増え、康則の給料も上がった。

そうして、企業競争のすれすれからようや

くぎりぎり中間に入って来れるようになっ

た時期の事だった。

いきなり社長に「話したい事がある」と呼

び出された。

社長は、5年程前から白髪の温厚な眼鏡を

かけたおじいさんだった。

社長は、眼鏡の奥の優しそうな目を大きく

して言った。

「清水君、君に重要なお願いがある。重要

だが、どうしても聞いて欲しいお願い

だ。」

「何でしょう?」

「それは、君が、このキューブミニット社

の次期社長になる事だ。」

「ほ、本当に、、」

「私はもう見ての通り、年で体が衰えてき

た。もうこの1年で退職しようと思ってい

るから、次期社長を誰にするかずっと悩ん

でいたのだが、清水君、君にして欲し

い。この短期間で売り上げは、君のおかげ

でずいぶん伸びた。引き受けてくれるか

い?」
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