隠された日記
「分かったわ。じゃあ、私が、出て来ても
決して撃たないように、ってそう言う。」
その会話は、聞いていて少し不思議だっ
た。まるで被害者の女性が、誘拐犯の心を
支配しているようだった。
「あのー。警察の皆さんにお願いです。こ
の人を絶対に撃たないでいてくれますか?」
「分かったよ。」
「ありがとうございます。」
受話器を少し離した。
「みんな、もしやつが出て来ても、撃たな
いでくれ!絶対に。良いか?」
すると、またざわついた。
「え、何故そんな事を、、?」
「話は後だ。」
受話器を再び近付けた。
「君の言う通り伝えたよ。」
「すみません、今テレビに映っている犯人
の両親を、連れてきてもらえますか?」
今、テレビの前で泣き叫んでいる老夫婦を
見た。
「すみません、すみません、、、私、、」
「落ち着いて、お母さん。」
「康則、、お願いだから、何でもするか
ら、降参して出て来て被害者と家族に謝っ
てちょうだい!!」