隠された日記









「分かったわ。じゃあ、私が、出て来ても

決して撃たないように、ってそう言う。」

その会話は、聞いていて少し不思議だっ

た。まるで被害者の女性が、誘拐犯の心を

支配しているようだった。

「あのー。警察の皆さんにお願いです。こ

の人を絶対に撃たないでいてくれますか?」

「分かったよ。」

「ありがとうございます。」

受話器を少し離した。

「みんな、もしやつが出て来ても、撃たな

いでくれ!絶対に。良いか?」

すると、またざわついた。

「え、何故そんな事を、、?」

「話は後だ。」

受話器を再び近付けた。

「君の言う通り伝えたよ。」

「すみません、今テレビに映っている犯人

の両親を、連れてきてもらえますか?」

今、テレビの前で泣き叫んでいる老夫婦を

見た。

「すみません、すみません、、、私、、」

「落ち着いて、お母さん。」

「康則、、お願いだから、何でもするか

ら、降参して出て来て被害者と家族に謝っ

てちょうだい!!」
< 96 / 111 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop