隠された日記



野次馬の中の60~70代くらいのおばあさん

達が、何が起きたのとひそひそ騒いでい

る。少し距離があって、警察の集団、その

横に報道メディアがいて、前で老夫婦が頭

を下げている。

(どうしよう。自分は、何をすべきなのだろ

う、、)

今この瞬間まで、家を出てから、ひたすら

あの人に惹かれてついて来た。それからこ

こに着くと分かっても、なんとなく自分は

ここに行くべきと感じ、必死に走った。だ

が、紗矢さんは私に、何を求めているのだ

ろう、、、、、、、、、、、、、、

少しでも近付きたくて、野次馬の中に入

る。おばあさん達の会話が聞こえる。

「被害者の人、かわいそうに、、14年も誘

拐されてたんだってね、あれ。」

「ひえ~、それはひどい話ねえ。あの子、

どうやってこれから生きていくのかし

ら、、」

「それもね、あの子の親は生まれてすぐに

死んで、ずっとひどい施設で育って、それ

で誘拐されても捜索願いが出なかったって

噂よ。だから今まで見つからなかった

の、、」

そのセリフで周りは憐む言葉を次々に言い

始めた。その中の1つのセリフに反応し

た。

「かわいそうに。親がいたら、必死に捜さ

れていたでしょうね。私なんか、子供が昔

遊びに行ってちょっと遅くなっても大丈夫?

と何回も聞いていたわ。」

その瞬間、ゆゆはピクッとした。

(あ、そういえば、お母さん、、、!)

そうだ。すっかり忘れていた。
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