私の推しはぬこ課長~恋は育成ゲームのようにうまくいきません!~
「ダメだ、俺がやってもみーたんが反応しない」
「ただ左右に振るだけですよ」
「やってる。こうだろ?」
須藤課長はスマホじゃなく、私に顔を近づけて説明した。スマホの画面に釘付けになっているせいで、私に近づいていることに気がついていないらしい。
イケメンだと認識してしまったゆえに、こんなことをされてしまったら、妙に意識してしまう自分がいた。
「須藤課長っ、顔が近いですよ」
「ゲッ! 変なことするつもりは本当にないからな!」
両手をバンザイしたまま、数歩下がる須藤課長のリアクションが面白すぎて、思わず――。
「変なことって、なんですか~?」
「変なことって、そりゃあ……」
じわじわ頬を染めて、しどろもどろに答える須藤課長の雰囲気からは、威厳を感じさせるものはひとつもなく、初心そのものだった。
「須藤課長あわよくばキス……、狙っていましたよね?」
「そんなもん、狙うわけがないだろ!」
「したことないですよね? だから狙うことができないんでしょ?」
バンザイして固まる須藤課長の目の前に立ちつくし、下から顔を覗き込んでやる。図星を突いた私の言葉に、悔しそうな表情をありありと浮かべた。
「したことあるに決まってるだろ。おまえ相手にしないって話だ……」
瞳を忙しなく泳がせて、歯切れが悪そうに喋ることで、嘘だというのがバレバレ。小さいコが須藤課長を見たら、間違いなく嘘だと指摘するだろう。
「したことあるなら、簡単にできますよねぇ。みーたんのお世話を頑張った私に、ご褒美でちゅってしてくださいよ」
笑いながら少しだけ顔を近づけたら、一歩退いて距離をとるので、ふたたび顔を近づけた。それを繰り返しているうちに、須藤課長を窓際まで追い詰めることに成功する。
「ヒツジ、おまえはヒツジの皮を被った悪魔だったんだな! こうして俺に迫っている時点で、セクハラ認定だぞ!」
「そういう須藤課長だって、朝からパワハラ炸裂させていたじゃないですか。あんなふうに頭ごなしに怒鳴られたら、誰だって委縮しちゃいます」
「うっ!」
営業部から異動したばかりの人間に言われたせいで、ショックが大きくなったのかもしれない。絶句した須藤課長は石のような固い表情で、私を見下ろす。
「しかもキスしたことないくせに、したなんて見え透いた嘘をつくし」
「嘘ついてない……」
「だったら、いつどこで、誰としたんですか? したなら言えますよね、実行できますよね?」
子どものような喧嘩じみたやり取りだったのに、そのことに突っ込むことをせずに、須藤課長は綺麗な眉毛をへの字にして、真っ赤な顔のまま呟く。
「適齢期の女性とその……、したことがないだけで、キスくらいしてるし!」
強い口調で言われた次の瞬間、気がついたときには、須藤課長の大きな片手で顔を上向かせられていた。端正な顔が近づいてくるタイミングで、ぎゅっと目を閉じる。
「えっ?」
額に触れた唇の生温かい感触を認識したときには、既に須藤課長は扉に向かっているという素早い身のこなしに、呆気にとられてしまった。
どんな顔をしているのかまったくわからないのに、ちまちま歩いて出て行く姿で、間違いなく照れて真っ赤になっていることがわかってしまい――。
「かわいい……」
キスされた額に触りながら、須藤課長についての感想を述べてしまう。ツンデレのツンの部分が多いせいで難があるけれど、デレたときの衝撃がハンパなくて、笑わずにはいられなかったのだった。
「ただ左右に振るだけですよ」
「やってる。こうだろ?」
須藤課長はスマホじゃなく、私に顔を近づけて説明した。スマホの画面に釘付けになっているせいで、私に近づいていることに気がついていないらしい。
イケメンだと認識してしまったゆえに、こんなことをされてしまったら、妙に意識してしまう自分がいた。
「須藤課長っ、顔が近いですよ」
「ゲッ! 変なことするつもりは本当にないからな!」
両手をバンザイしたまま、数歩下がる須藤課長のリアクションが面白すぎて、思わず――。
「変なことって、なんですか~?」
「変なことって、そりゃあ……」
じわじわ頬を染めて、しどろもどろに答える須藤課長の雰囲気からは、威厳を感じさせるものはひとつもなく、初心そのものだった。
「須藤課長あわよくばキス……、狙っていましたよね?」
「そんなもん、狙うわけがないだろ!」
「したことないですよね? だから狙うことができないんでしょ?」
バンザイして固まる須藤課長の目の前に立ちつくし、下から顔を覗き込んでやる。図星を突いた私の言葉に、悔しそうな表情をありありと浮かべた。
「したことあるに決まってるだろ。おまえ相手にしないって話だ……」
瞳を忙しなく泳がせて、歯切れが悪そうに喋ることで、嘘だというのがバレバレ。小さいコが須藤課長を見たら、間違いなく嘘だと指摘するだろう。
「したことあるなら、簡単にできますよねぇ。みーたんのお世話を頑張った私に、ご褒美でちゅってしてくださいよ」
笑いながら少しだけ顔を近づけたら、一歩退いて距離をとるので、ふたたび顔を近づけた。それを繰り返しているうちに、須藤課長を窓際まで追い詰めることに成功する。
「ヒツジ、おまえはヒツジの皮を被った悪魔だったんだな! こうして俺に迫っている時点で、セクハラ認定だぞ!」
「そういう須藤課長だって、朝からパワハラ炸裂させていたじゃないですか。あんなふうに頭ごなしに怒鳴られたら、誰だって委縮しちゃいます」
「うっ!」
営業部から異動したばかりの人間に言われたせいで、ショックが大きくなったのかもしれない。絶句した須藤課長は石のような固い表情で、私を見下ろす。
「しかもキスしたことないくせに、したなんて見え透いた嘘をつくし」
「嘘ついてない……」
「だったら、いつどこで、誰としたんですか? したなら言えますよね、実行できますよね?」
子どものような喧嘩じみたやり取りだったのに、そのことに突っ込むことをせずに、須藤課長は綺麗な眉毛をへの字にして、真っ赤な顔のまま呟く。
「適齢期の女性とその……、したことがないだけで、キスくらいしてるし!」
強い口調で言われた次の瞬間、気がついたときには、須藤課長の大きな片手で顔を上向かせられていた。端正な顔が近づいてくるタイミングで、ぎゅっと目を閉じる。
「えっ?」
額に触れた唇の生温かい感触を認識したときには、既に須藤課長は扉に向かっているという素早い身のこなしに、呆気にとられてしまった。
どんな顔をしているのかまったくわからないのに、ちまちま歩いて出て行く姿で、間違いなく照れて真っ赤になっていることがわかってしまい――。
「かわいい……」
キスされた額に触りながら、須藤課長についての感想を述べてしまう。ツンデレのツンの部分が多いせいで難があるけれど、デレたときの衝撃がハンパなくて、笑わずにはいられなかったのだった。