私の推しはぬこ課長~恋は育成ゲームのようにうまくいきません!~
***
ちょうど須藤課長のデスクの背後にある窓を、乾拭きしていたときだった。
「おい、ほかの奴らはどうした?」
部署に入った途端に、眉間におっかない皺を寄せた須藤課長が問いかけた。
「今月末におこなわれる新入社員歓迎会の出し物を、ミーティングルームで打ち合わせしています。山田さんは営業部で書類のチェックに出ていていません」
私の言葉を聞いて、目の前で当惑を表すように眉をひそめる
「山田抜きでわざわざ隣に移動して打ち合わせって、嫌な予感しかしないな。なにを考えているんだ」
大きなため息を吐きながら、須藤課長は閉めたばかりの扉をふたたび開けて、背を向けて歩きかけたのに動きを止める。
「ヒツジ、帰りちょっとだけ残ってくれ。みーたんのことで聞きたいことがある」
そして私の返事を聞かずに、さっさと出て行ってしまった。しんと静まり返る部署に、「残されるなんて……」という愚痴が空気に溶け込んで消える。
(取調室でおこなわれるようなやり取りをまたしなきゃいけないなんて、初日から本当についてないな。早く帰りたかったのに――)
しかも監視カメラの前では、ミーティングルームでおこなった大胆な行動はもうできない。なにかあったら、さっきみたいなツッコミが入るのが目に見える。
「気が重いよ……」
そんな気持ちとは裏腹に、磨いている窓ガラスがめちゃくちゃ綺麗になったのだった。
ちょうど須藤課長のデスクの背後にある窓を、乾拭きしていたときだった。
「おい、ほかの奴らはどうした?」
部署に入った途端に、眉間におっかない皺を寄せた須藤課長が問いかけた。
「今月末におこなわれる新入社員歓迎会の出し物を、ミーティングルームで打ち合わせしています。山田さんは営業部で書類のチェックに出ていていません」
私の言葉を聞いて、目の前で当惑を表すように眉をひそめる
「山田抜きでわざわざ隣に移動して打ち合わせって、嫌な予感しかしないな。なにを考えているんだ」
大きなため息を吐きながら、須藤課長は閉めたばかりの扉をふたたび開けて、背を向けて歩きかけたのに動きを止める。
「ヒツジ、帰りちょっとだけ残ってくれ。みーたんのことで聞きたいことがある」
そして私の返事を聞かずに、さっさと出て行ってしまった。しんと静まり返る部署に、「残されるなんて……」という愚痴が空気に溶け込んで消える。
(取調室でおこなわれるようなやり取りをまたしなきゃいけないなんて、初日から本当についてないな。早く帰りたかったのに――)
しかも監視カメラの前では、ミーティングルームでおこなった大胆な行動はもうできない。なにかあったら、さっきみたいなツッコミが入るのが目に見える。
「気が重いよ……」
そんな気持ちとは裏腹に、磨いている窓ガラスがめちゃくちゃ綺麗になったのだった。