私の推しはぬこ課長~恋は育成ゲームのようにうまくいきません!~
ちらりと私を横目で見た、須藤課長の視線。今にもとって食ってやると言っているようなまなざしで見られたため、顔がぶわっと一気に熱くなるのがわかった。
「いいぃ、やぁ、しないでください!」
「愛衣さんの唇の隙間から、舌先が見えていたのに?」
「へっ?」
自分でも知らなかったことに、顔を赤くしたまま茫然とする。
「俺からした、はじめてのキスがディープなものというのもちょっとなと思って、アレで止めたんだが、愛衣さんとしては物足りなくて、舌が出たんだろ?」
「違います、そんなんじゃないですから!」
「素直にならないと、自分好みに俺を育てるなんてできないぞ」
「本当に、そんなんじゃないです!」
須藤課長以上に顔が赤くなっているであろう私を乗せた車が、その後何事もなく突き進み、自宅マンション前に到着した。
(否定すればするほど墓穴を掘りそうで、結局なにも言えなかった……)
「愛衣さん――」
「きっ今日は、ありがとうございました。それじゃまた明日っ!」
逃げるが勝ちと言わんばかりにシートベルトを外そうとボタンを押した途端に、その手を掴まれた。シートベルトはうまいこと外れたのに、須藤課長に手を掴まれているせいで、車から出ることができない。
「須藤課長、放してください」
「考えていた言葉を、まだ全部伝えてない」
「いやいや、すっごく伝わってますので、これ以上言われても時間の無駄ですって」
すき好き言われ慣れていない私にとって、須藤課長の愛の告白は、かなり心臓に悪いと思われる。
「君が好きだ。どうしていいのかわからないくらい大好きなんだ。この気持ちはずっと変わらない。愛衣さんに俺のはじめてを全部あげる。だから意識してくれ」
(――うわぁ、はじまってしまった!)
「はじめてをあげるなんて言われても、超絶困ります。いらないですから!」
逃がさない気持ちが利き手を掴んでいる握力に表れていて、無下に振り解けない。強く拒否したらこの人のことだ、ここで号泣する恐れがある。そうなったらますます、車から降りられなくなる。
「どうしたら俺を意識してくれる?」
いらないとやんわり拒否したからか、違うところからアプローチされた。この調子でちょっとずつやる気を削ごうと、勇んで口を開く。
「嫌ってくらいに意識してますよ。こんなにたくさん想いを告げられたら、対処に困ってしまって……」
「俺としては、まだ全部告げてない」
須藤課長の体はシートベルトで固定されてるはずなのに、それを無視したまま、強引に私を抱き寄せた。
「!!」
「柔らかくてあったかくて、俺に元気をくれる愛衣さんが好き」
「元気をあげたつもりはありませんっ!」
私としては、無駄に気を遣ってるだけだと思うのに――。
「いいぃ、やぁ、しないでください!」
「愛衣さんの唇の隙間から、舌先が見えていたのに?」
「へっ?」
自分でも知らなかったことに、顔を赤くしたまま茫然とする。
「俺からした、はじめてのキスがディープなものというのもちょっとなと思って、アレで止めたんだが、愛衣さんとしては物足りなくて、舌が出たんだろ?」
「違います、そんなんじゃないですから!」
「素直にならないと、自分好みに俺を育てるなんてできないぞ」
「本当に、そんなんじゃないです!」
須藤課長以上に顔が赤くなっているであろう私を乗せた車が、その後何事もなく突き進み、自宅マンション前に到着した。
(否定すればするほど墓穴を掘りそうで、結局なにも言えなかった……)
「愛衣さん――」
「きっ今日は、ありがとうございました。それじゃまた明日っ!」
逃げるが勝ちと言わんばかりにシートベルトを外そうとボタンを押した途端に、その手を掴まれた。シートベルトはうまいこと外れたのに、須藤課長に手を掴まれているせいで、車から出ることができない。
「須藤課長、放してください」
「考えていた言葉を、まだ全部伝えてない」
「いやいや、すっごく伝わってますので、これ以上言われても時間の無駄ですって」
すき好き言われ慣れていない私にとって、須藤課長の愛の告白は、かなり心臓に悪いと思われる。
「君が好きだ。どうしていいのかわからないくらい大好きなんだ。この気持ちはずっと変わらない。愛衣さんに俺のはじめてを全部あげる。だから意識してくれ」
(――うわぁ、はじまってしまった!)
「はじめてをあげるなんて言われても、超絶困ります。いらないですから!」
逃がさない気持ちが利き手を掴んでいる握力に表れていて、無下に振り解けない。強く拒否したらこの人のことだ、ここで号泣する恐れがある。そうなったらますます、車から降りられなくなる。
「どうしたら俺を意識してくれる?」
いらないとやんわり拒否したからか、違うところからアプローチされた。この調子でちょっとずつやる気を削ごうと、勇んで口を開く。
「嫌ってくらいに意識してますよ。こんなにたくさん想いを告げられたら、対処に困ってしまって……」
「俺としては、まだ全部告げてない」
須藤課長の体はシートベルトで固定されてるはずなのに、それを無視したまま、強引に私を抱き寄せた。
「!!」
「柔らかくてあったかくて、俺に元気をくれる愛衣さんが好き」
「元気をあげたつもりはありませんっ!」
私としては、無駄に気を遣ってるだけだと思うのに――。