私の推しはぬこ課長~恋は育成ゲームのようにうまくいきません!~
須藤課長と同じくらいの身長の高藤さん。ごまかしを許さない視線が、須藤課長に直で注がれる。
「雛川さん……、愛衣さんと恋人になりました」
「だってさ、山田くん。君はどうするんだい?」
高藤さんは抱きしめていた須藤課長を解放して、後方にいた山田さんに訊ねた。すると一歩だけ前に出て来て、私に話しかける。
「雛川さんはこれでいいの? だって須藤課長は、雛川さんを好きな気持ちを全部忘れてしまった人だよ。俺ならほかのことを忘れても、雛川さんのことは忘れない自信がある」
言葉に重みをもたせるように、ゆっくりと言いきった山田さんに、須藤課長は背筋をぴんと伸ばして、自分より離れたところにいる彼を目力を込めながら凝視した。
「山田は経理の小鳥遊さんにも、気があったハズじゃなかったっけ?」
「それは――」
「同じタイプだと、秘書課の照本さんも山田の好みに入る部類だよな。高嶺の花の彼女たちが手に入らないからって、身近にいる雛川さんに狙いをつけるのは、どうかと思います」
2年前から、私に想いを寄せていた須藤課長。接点がまったくないのに、営業部に顔を出せる仕事を無理やり作ったりと、彼なりに努力をしているのを聞いていた。しかも思いっきり私情を挟んでいるというのに、経営戦略部に私を異動させるという暴挙は、驚きよりも須藤課長の情熱を感じることができる。
(だからこそ、私のやることはひとつ――)
「山田さん、ごめんなさい。私は須藤課長と付き合うことに決めました。私への気持ちを忘れてしまった須藤課長が、そのことを思い出せるように、傍にいてあげたいと思ったのが決め手になったかもです」
「ヒツジちゃんの愛をビンビンに感じるわぁ。せやけど、須藤課長は好きになったことを忘れたのに、ふたたびヒツジちゃんを好きになるんは、なにかきっかけがあったん?」
山田さんにごめんなさいをした、私のセリフを無にするくらいに気になることを、猿渡さんは口にした。それは私だけじゃなくて、ほかのメンバーも同じらしく、皆の視線が須藤課長に集中する。
「雛川さん……、愛衣さんと恋人になりました」
「だってさ、山田くん。君はどうするんだい?」
高藤さんは抱きしめていた須藤課長を解放して、後方にいた山田さんに訊ねた。すると一歩だけ前に出て来て、私に話しかける。
「雛川さんはこれでいいの? だって須藤課長は、雛川さんを好きな気持ちを全部忘れてしまった人だよ。俺ならほかのことを忘れても、雛川さんのことは忘れない自信がある」
言葉に重みをもたせるように、ゆっくりと言いきった山田さんに、須藤課長は背筋をぴんと伸ばして、自分より離れたところにいる彼を目力を込めながら凝視した。
「山田は経理の小鳥遊さんにも、気があったハズじゃなかったっけ?」
「それは――」
「同じタイプだと、秘書課の照本さんも山田の好みに入る部類だよな。高嶺の花の彼女たちが手に入らないからって、身近にいる雛川さんに狙いをつけるのは、どうかと思います」
2年前から、私に想いを寄せていた須藤課長。接点がまったくないのに、営業部に顔を出せる仕事を無理やり作ったりと、彼なりに努力をしているのを聞いていた。しかも思いっきり私情を挟んでいるというのに、経営戦略部に私を異動させるという暴挙は、驚きよりも須藤課長の情熱を感じることができる。
(だからこそ、私のやることはひとつ――)
「山田さん、ごめんなさい。私は須藤課長と付き合うことに決めました。私への気持ちを忘れてしまった須藤課長が、そのことを思い出せるように、傍にいてあげたいと思ったのが決め手になったかもです」
「ヒツジちゃんの愛をビンビンに感じるわぁ。せやけど、須藤課長は好きになったことを忘れたのに、ふたたびヒツジちゃんを好きになるんは、なにかきっかけがあったん?」
山田さんにごめんなさいをした、私のセリフを無にするくらいに気になることを、猿渡さんは口にした。それは私だけじゃなくて、ほかのメンバーも同じらしく、皆の視線が須藤課長に集中する。