私の推しはぬこ課長~恋は育成ゲームのようにうまくいきません!~
(経営戦略部の中で、一番真面目な山田さんが不倫していたなんて、どういうこと? だって私にモーションかけながら、裏でちゃっかり不倫していたなんて……)
「結果的に、不倫関係になっただけです。個人的な付き合いを、他人にとやかく言われる覚えはありません」
「不貞行為をしてるのは事実やろ。向こうの旦那さんに訴えられたら、どうするつもりなんや?」
「それは――」
「高額な慰謝料請求と周りの目を考えたら、ここを退職せにゃならん。経営戦略部のことを考えて、進んでやってくれてることとはいえ、あまりにリスクがありすぎるやろ」
「違います、そんなんじゃない。彼女の旦那さんが不能になったのをたまたま耳にして、互いの欲のはけ口になるんじゃないかという、合理的な考えではじまっただけで」
「ええかげんにせぇな! おまえはそんなキャラやない。あまりに無理すぎるんや!」
テンポよく会話が進んでからの猿渡さんの𠮟責は、ものすごい迫力があった。糸目から見えた眼球が血走っているのを、目の当たりにしたせいかもしれないけれど――。
「山田がそんなことせんでもよかったんや。なんで須藤課長の仕事を増やすことをすんねん」
「俺は別に、あの人の仕事を増やすつもりはなくて」
「実際僕におまえの監視をさせとる時点で、必然的に増やしてるんや。わかれや!」
猿渡さんの怒号に目を見開きながら息を飲んだ山田さんが、やっと口を噤んだ。給湯室がしんと静まり返り、静寂に包まれる。ふたりの迫力あるやり取りのせいで、私はその場から動けなかったし、山田さんをフォローするために話しかけることすらできなかった。
「経営戦略部で一番先に手をつけられそうなのが、山田なのはわかってる?」
「はい。社歴と年齢が若いし隙があるから、なにかと操りやすい人物だからでしょうね」
「それなのに今回は、高藤が餌食になった。ガードの緩い山田じゃなくどうして高藤なんだって、誰でも思うはずや。松本っちゃんのパソコンを囮にしたように、山田を囮にしてたのに、どうして引っかからなかったのかと、須藤課長は頭を抱えたっちゅーわけや」
「結果的に、不倫関係になっただけです。個人的な付き合いを、他人にとやかく言われる覚えはありません」
「不貞行為をしてるのは事実やろ。向こうの旦那さんに訴えられたら、どうするつもりなんや?」
「それは――」
「高額な慰謝料請求と周りの目を考えたら、ここを退職せにゃならん。経営戦略部のことを考えて、進んでやってくれてることとはいえ、あまりにリスクがありすぎるやろ」
「違います、そんなんじゃない。彼女の旦那さんが不能になったのをたまたま耳にして、互いの欲のはけ口になるんじゃないかという、合理的な考えではじまっただけで」
「ええかげんにせぇな! おまえはそんなキャラやない。あまりに無理すぎるんや!」
テンポよく会話が進んでからの猿渡さんの𠮟責は、ものすごい迫力があった。糸目から見えた眼球が血走っているのを、目の当たりにしたせいかもしれないけれど――。
「山田がそんなことせんでもよかったんや。なんで須藤課長の仕事を増やすことをすんねん」
「俺は別に、あの人の仕事を増やすつもりはなくて」
「実際僕におまえの監視をさせとる時点で、必然的に増やしてるんや。わかれや!」
猿渡さんの怒号に目を見開きながら息を飲んだ山田さんが、やっと口を噤んだ。給湯室がしんと静まり返り、静寂に包まれる。ふたりの迫力あるやり取りのせいで、私はその場から動けなかったし、山田さんをフォローするために話しかけることすらできなかった。
「経営戦略部で一番先に手をつけられそうなのが、山田なのはわかってる?」
「はい。社歴と年齢が若いし隙があるから、なにかと操りやすい人物だからでしょうね」
「それなのに今回は、高藤が餌食になった。ガードの緩い山田じゃなくどうして高藤なんだって、誰でも思うはずや。松本っちゃんのパソコンを囮にしたように、山田を囮にしてたのに、どうして引っかからなかったのかと、須藤課長は頭を抱えたっちゅーわけや」