私の推しはぬこ課長~恋は育成ゲームのようにうまくいきません!~
***
須藤課長が去ったあと、防犯カメラに映らないところでぼーっと突っ立っていた。頬の熱やらいろんなものが落ち着いてから、重たい足取りで部署に戻る。
(平常心、平常心っと! 充明くんだっていつもどおりに戻って、今頃一生懸命に仕事をしてるんだから、私がサポートしなくちゃね)
そんなことを考えつつ、気合いを入れながら部署の扉を開けた瞬間、活気の満ち溢れた様子を目の当たりにして、思いっきり面食らった。午前中とはまったく違う雰囲気に驚き、その場に立ち竦む。
「ええかみんな、とっとと仕事をやっつけなアカンで! なる早なんてぬるいことを考えとったら、須藤課長に代わって僕がぶち殺す!」
いつも以上に煩い猿渡さんの大きな声が部署に響き渡り、思わず耳を塞いでしまった。
(――これはいったい、なにがどうなってるの?)
扉の前で固まる私に、高藤さんが近づいて来て、済まなそうに頭を下げる。耳を塞いでいた手を慌てて外したけれど、頭を下げられる理由がわからなくて、困ってしまった。
「ヒツジちゃん、いろいろ我慢させることになってしまってゴメンね。つらかったら相談にのるから」
「えっと相談とは?」
「ここの問題が解決するまで、どれくらい時間がかかるかわからない現状でしょ。我慢ばかりしていたら、間違いなく体に悪いからね。大人の玩具でいいのがあるの知ってるから、こっそり教えてあげる」
そう言って、手に持っていたスマホでなにかを調べはじめる高藤さんの頭を、背後からやって来た須藤課長が躊躇なくグーで殴った。
「いたっ!」
ごんっという鈍い音がしたというのに、ほかのメンバーがまったく見向きもしないことに、ふたたび驚くしかない。
(メンバー同士の団結力が強固だと思っていたのは、私の幻だったのかな。これは本当に、なにがあったというのだろう?)
いつもなら真っ先にオヤジギャグでフォローに入る原尾さんが、イケおじの様相をそのままに書類に書き込みをしている様子は、できる社員に見えてしまうレベルだった。
「そんなもん、ヒツジに必要ない! おまえは手をつけた仕事を、今日中にやれよ。猿渡にどやされるぞ」
須藤課長が去ったあと、防犯カメラに映らないところでぼーっと突っ立っていた。頬の熱やらいろんなものが落ち着いてから、重たい足取りで部署に戻る。
(平常心、平常心っと! 充明くんだっていつもどおりに戻って、今頃一生懸命に仕事をしてるんだから、私がサポートしなくちゃね)
そんなことを考えつつ、気合いを入れながら部署の扉を開けた瞬間、活気の満ち溢れた様子を目の当たりにして、思いっきり面食らった。午前中とはまったく違う雰囲気に驚き、その場に立ち竦む。
「ええかみんな、とっとと仕事をやっつけなアカンで! なる早なんてぬるいことを考えとったら、須藤課長に代わって僕がぶち殺す!」
いつも以上に煩い猿渡さんの大きな声が部署に響き渡り、思わず耳を塞いでしまった。
(――これはいったい、なにがどうなってるの?)
扉の前で固まる私に、高藤さんが近づいて来て、済まなそうに頭を下げる。耳を塞いでいた手を慌てて外したけれど、頭を下げられる理由がわからなくて、困ってしまった。
「ヒツジちゃん、いろいろ我慢させることになってしまってゴメンね。つらかったら相談にのるから」
「えっと相談とは?」
「ここの問題が解決するまで、どれくらい時間がかかるかわからない現状でしょ。我慢ばかりしていたら、間違いなく体に悪いからね。大人の玩具でいいのがあるの知ってるから、こっそり教えてあげる」
そう言って、手に持っていたスマホでなにかを調べはじめる高藤さんの頭を、背後からやって来た須藤課長が躊躇なくグーで殴った。
「いたっ!」
ごんっという鈍い音がしたというのに、ほかのメンバーがまったく見向きもしないことに、ふたたび驚くしかない。
(メンバー同士の団結力が強固だと思っていたのは、私の幻だったのかな。これは本当に、なにがあったというのだろう?)
いつもなら真っ先にオヤジギャグでフォローに入る原尾さんが、イケおじの様相をそのままに書類に書き込みをしている様子は、できる社員に見えてしまうレベルだった。
「そんなもん、ヒツジに必要ない! おまえは手をつけた仕事を、今日中にやれよ。猿渡にどやされるぞ」