先生と私の恋日記
淡い期待
12月10日
私は体育の授業が始まる前、先生に尋ねた。
「そうだ、先生ー。男バレの予定表が欲しんですけど。」
「誰か持ってんだろ。」
先生がそうやって私をいじめるのはいつものことだ。相変わらず素直じゃないところが可愛い。
「職員室に取りに来い。今4時間目だから、これ終わったらな。」
「はい。」
私は体育が終わると速攻で着替え、荷物を持ったまま職員室へ向かった。
「失礼します。」
名前や組、用件を言い終え、職員室を見渡したが先生はいなかった。
(すぐに来いって言ったの先生なのに…。)
そう不満げに思っていると、先生が職員室の奥からひょこっと顔を出した。
「入ってきて良いよ。」
入り口で戸惑う私にそう言った。
とりあえず私は先生のデスクに行って、先生が予定表を探すのを眺めていた。
デスクの上には奥さんが作ったと思われるお弁当が広げられていた。悲しい反面、嬉しいという気持ちもあった。
"先生は今、幸せなんだ"って…。
予定表を見つけた先生はそれを持ってコピー機に向かったので、私もついて行った。
コピー機の前で先生が予定表を印刷するのを待っていると、突然
「お前将来何になりたいの?」
先生は小さな声で私にそう尋ねた。少し前にも聞いたことのある質問だった。
(前も言ったのに…。)
そう思いつつも答えた。
「前も言いましたけど、救急救命士です。」
まだ、はっきりしていたわけじゃなかったため答える声がかなり小さくなってしまった。さすがに多くの先生に私の夢がバレるのは恥ずかしい。
「なんで?」
先生は続けた。
「かっこいいから。」
「体育教師に興味ないの?」
「特にないですね。」
そんな話をしながらデスクに戻り、予定表の変更箇所を書き換えながら先生は私にこう言った。
「体育教師なれよ、俺が面倒みるから。」
心臓が一瞬止まった気がした。
(先生は、私と仕事したいって、一緒にいたいって思ってくれてるの…?)
自意識過剰かもしれないけど、そんな風に感じた。
すごく嬉しかったけど、照れくささと恥ずかしくさで早くその場から逃げ出したかった。
もし屋上があったなら、思いっきり叫ぶのに。
「え〜。」
頭が回らず、そう返すので精一杯だった。
「ん?」
どうやら先生には私の返事が聞こえなかったらしい。だから私は言い直して、
「考えておきますね。」
と言って、職員室を後にした。
顔がすごく熱くなっていた。
湧き上がる笑みを必死に抑え、廊下を歩く。
もう冬だというのに空からは温かな日差しが差し込んでいた。