腕を失った日〜あなたを、守りたい〜
叶羽は美羽の手を引き、普段人がよく使う方の階段ではなく避難訓練などの時によく使う裏庭に出られる階段を使うことにした。

「犯人はきっと、こっちには来てないはず!」

そう願い、叶羽は美羽と階段を降りていく。ここまで銃声も誰の声も聞いていない。

踊り場に叶羽が足を下ろした刹那、パンッと銃声が近くで響いた。そして、ぐらりと美羽の体がその場に崩れ落ちる。

「美羽ちゃん!!」

美羽の太ももからは、大量の血が流れていた。叶羽が上を見れば、男性が楽しそうに笑いながら銃に弾を詰めている。男性は、叶羽たちが図書室から出てくるのを待っていたのだ。完全に、叶羽たちは罠にかかった。

「……ッ!美羽ちゃん!!」

「いっ……!うぅ……!!」

美羽の足からは血が流れ続けている。叶羽は慌ててハンカチを取り出し、美羽の太ももを押さえた。そのハンカチは、お姉ちゃんと喧嘩したことのあるジェラトーニのハンカチだった。しかし、汚れるなど叶羽は思っていない。美羽を救うことの方がもっと大切だ。
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