ホームズの子孫の役に立ちたい
ハティーさんの言う通り、塔の出入り口となる鉄のドアには厳重に鍵がかけられている。ホームズさんからピッキングで簡単に開けているんだろうな。

「いつ頃から幽霊の噂はあったんですか?」

「入学した頃、メアリ先生が授業中にみんなに教えたんです。「あの塔には幽霊が出るから近づいてはいけません」って」

この会話を、ホームズさんとワトソン先生は聞いている。何かわかったらすぐに連絡をくれるはずだ。

「このドア以外には出入り口はありますか?」

「いえ、秘密の扉などはなかったはずです」

古くなり、薄汚れたその不気味な塔を私は見上げる。そして、ホームズさんならこうするだろうなと考えた。

「夜中に、もう一度来てみます。ハティーさんは危ないのでここにいてください」

私の強い言葉に、ハティーさんはコクリと頷いていた。



その日の夜中、私はベッドを抜け出して懲罰塔へと足を進める。本来なら、生徒が出歩いてはいけない時間だ。

私は右手に懐中電灯を握り、左手に持ったスマホは耳に当てられている。ホームズさんと話しているんだ。
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