ホームズの子孫の役に立ちたい
「和香、僕は君に潜入調査を頼んだ。しかし、夜中に出歩くのは危険すぎる。何かあってからじゃ遅い」

ホームズさんはそう言うけど、私は足を止めることなどできない。だってもう懲罰塔の前に来てしまっているから。

「ホームズさん!私、ハティーさんに真実を教えたいんです。ヴァイオレットさんを絶対に見つけたいんです」

ホームズさんと話しながら、私はぐるりと懲罰塔の周りを回る。昼間見た時とは違った不気味さに、私はホームズさんと電話していてよかったと思った。一人でこんなところは来れない。

ハティーさんとヴァイオレットさんが怪しい光を見たという窓を見つめる。塔の窓におかしなものは何もない。

「初日から全てが順調に進むわけがない。早く寮へ戻るんだ」

カメラの映像を見ているホームズさんは言う。でも、私は何かヴァイオレットさんの手がかりを見つけたくて、必死で地面に光を当てた。

「あれ?ホームズさん、これって……」

昼間は気付かなかったけど、地面に何か落ちている。ギラリと銀色に輝くのは、一本の針金だ。
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