総長さま、溺愛中につき。①〜転校先は、最強男子だらけ〜

 私なんかでよければ、そばにいさせてもらおう。

 会長さんは、私に背を向けるように寝返りを打った。



「……おい」



 低い声が響いて、再び首をかしげる。



「はい?」



 会長さんは、少しの間何も言わず、黙り込んだあと……。



「……助かった」



 ぼそりと、そう呟いた。

 顔が見えないから表情はわからないけど、その言葉に頰が緩む。

 この人は、不器用な人なのかもしれない。

 でも……悪い人では、きっとない。

 私はふふっと笑ったあと、会長さんの背中を見ながら口を開いた。



「早く元気になると、いいですね……」



 ふたりきりの室内にはずっと沈黙が流れていたけれど、不思議と息苦しさはなかった。


 むしろ、無言でも心地よく感じるような空気があって、私はいつの間にかまた、眠ってしまっていた。

< 206 / 347 >

この作品をシェア

pagetop