総長さま、溺愛中につき。①〜転校先は、最強男子だらけ〜


 俺たちと仲良くしているせいで、女子から嫌われている地味メガネ。

 どんな鈍足で走るんだろうとわくわくしながら50メートル走をする地味メガネを見ていると、隣の女に足を引っかけられた。

 誰もが転ぶと思ったのに、地味メガネはとっさに受け身を取り、くるりと軽々と回転して見せた。

 なんだあの動き……こいつ、マジで何者なんだ。

 引っかけた女も、たぶん一緒に企んでいたんだろう女たちが全員、呆然と地味メガネを見ていた。

 女だけじゃない。教師含む見ていた人間全員だ。

 その後、地味メガネは足を引っかけた女を責めるでもなく、もう一度50メートルのスタートをきった。

 まさかこんな運動神経が悪そうな奴が、目を疑うほどのスピードで走るなんて誰も思わないだろ。

 マジで何者だよ、こいつ……。
 その後も地味メガネは活躍しているのか、体育の教師が終始騒いでいた。

 部活の勧誘もされていたようで、体育館の隅っこでその姿を見つめる。

 あいつに勝てるところなんて、顔面偏差値くらいなのか……。

 そう思うと、ため息がこぼれた。



「やよ、次俺行くよ。マスクつけてて」



 そう言って、かよが誰にもバレないようにこっそりマスクを外した。


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