総長さま、溺愛中につき。①〜転校先は、最強男子だらけ〜

「なんでって言われても……」



 地味メガネは本気で不思議そうにしていて、その反応にますます意味がわからなくなった。



「親も、わからないのに……」



 まだ小学生の頃だった。

 両親を笑わせようと、かよと入れ替わったことがある。

 その時――両親は俺とかよが入れ替わっていることに、気づいてはくれなかった。

 俺たちはショックすぎて、ネタバラシすることもできずに、その日は1日中お互いのふりをし続けた。

 夜部屋でふたりになって、身を寄せて一緒に泣いたことを、今でも覚えている。

 きっと俺たちのどちらが死んでも、それほど悲しむ人はいないだろう。

 だって、似たような奴がもうひとりいるんだから。

 俺たちは、替えのきく人間。

 ……ずっとずっと、そう思って生きてきた。

 それなのに……もう諦めていたのに、どうしてこいつはこんないとも簡単に、俺たちを見つけてくれたんだろう。


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