総長さま、溺愛中につき。①〜転校先は、最強男子だらけ〜


 諦めていた感情の蓋を、こじ開けようとしてくるんだろう。

 地味メガネは、俺たちを見つめて微笑んだ。



「ふたりとも、顔はそっくりだけど……雰囲気とか、身にまとってる空気が全然違うよ。声も話し方も。って、私も最近やっとわかるようになったんだけど」



 雰囲気……空気?



「俺とかよが、違う?」



 本当に……?

 俺たちは、ちゃんと唯一の存在か……? 替えのきかない、誰かの、たったひとりになれる存在か……?



「うん。当たり前だよ。ふたりは違う人間なんだから」



 即答した地味メガネに、ごくりと息をのんだ。



「弥生くんには弥生くんの、華生くんには華生くんの個性があるよ」



 地味メガネの言葉に、俺は初めて誰かに――“弥生”として、見てもらえた気がした。


< 279 / 347 >

この作品をシェア

pagetop