総長さま、溺愛中につき。①〜転校先は、最強男子だらけ〜
諦めていた感情の蓋を、こじ開けようとしてくるんだろう。
地味メガネは、俺たちを見つめて微笑んだ。
「ふたりとも、顔はそっくりだけど……雰囲気とか、身にまとってる空気が全然違うよ。声も話し方も。って、私も最近やっとわかるようになったんだけど」
雰囲気……空気?
「俺とかよが、違う?」
本当に……?
俺たちは、ちゃんと唯一の存在か……? 替えのきかない、誰かの、たったひとりになれる存在か……?
「うん。当たり前だよ。ふたりは違う人間なんだから」
即答した地味メガネに、ごくりと息をのんだ。
「弥生くんには弥生くんの、華生くんには華生くんの個性があるよ」
地味メガネの言葉に、俺は初めて誰かに――“弥生”として、見てもらえた気がした。