総長さま、溺愛中につき。①〜転校先は、最強男子だらけ〜
俺の頭から離れないそいつを。
キョロキョロとあたりを見渡して、階段を降りていった由姫の後ろ姿を呆然と見つめた。
って、ボーっとしてる場合じゃない。
俺はできるだけ気配を消して、由姫のあとを追った。
まさか……由姫が俺を待ち伏せ……?
……いや、相手は袋叩きにする計画だって言ってたから、ひとりのはずがない。
それに、由姫はそんなことをするわけじゃない。
人を疑うのが癖な俺が、由姫にだけは謎の信頼を抱いていた。
でも、ならどうして由姫がこんなところに?
ただの興味本位で迷い込んだ……とかか?
そうだとしたら……危険だ。
舜の言うことが正しければ、中にはfatalの奴が潜んでる。
あんな弱そうな奴、一瞬でやられるだろう。
もし由姫が危害を与えられたら……。
――俺はたぶん、相手の奴を殺したくなる。
そんな自分の思考に驚く暇もないくらい焦っていた俺は、急いで由姫のあとを追った。
……ん?
地下に降りると、由姫はまるで敵を迎え撃つように、物陰のないほうへと歩いていく。
俺はその行動の意図がわからず、足を止めた。
薄暗いが、俺はこの場所に慣れていることもあり姿形はよく見えていた。
あいつ……まるでここに“敵が潜んでる”って、わかってるみたいな動きかた。
いや……おびき寄せようとしてるみたい、と言ったほうが正しい。
不思議に思い、少しの間考えるように立ち止まってしまった。
「……行けお前ら!!」
……っ、まずい。
合図の声が上がり、一気に6人が姿を現した。
由姫を俺だと思ったのか、一斉に飛びかかる奴ら。
急いで駆けよろうとしたが、俺は由姫の動きに足を止めた。
目に見えない速度で体のあらゆる部位を動かし、一撃で4人を落とした。
……は?
ありえない光景に、俺は言葉を失った。
由姫……?
こいつ、なんでこんなに……。