【女の事件】続黒煙のレクイエム
第14話
ところ変わって、三陸町泊にあるきよひこの実家にて…
きよひこは、11月20日に兄・かつひこと大ゲンカを起こした後家出をして行方不明になっていた。
心配になったさよこは、きよひこの知人の家に手当たり次第に電話をかけて、きよひこが来ていないかどうかをたずねていた。
きよひこが行方不明になっていたので、さよこやきよひこの父親は心配になっていた。
知人の家に滞在をしていない…
大船渡市の中心部や周辺の釜石市や陸前高田市や気仙沼市にはきよひこの知人がいない…
そこへ、虫の知らせを告げる電話のベルが鳴った。
(チリリリリン…チリリリリン…チリリリリン…チリリリリン…ガチャッ…)
さよこは、不安げな表情で電話に出てみた。
「もしもし…大船渡市の消防本部がうちに何の用でしょうか…かつひこがイキウメ…イキウメ…いきうめ…」
さよこは、大船渡市内にあるセメント工場内で作業中のかつひこが特大ダンプに積まれていたバラス(コンクリートにまぜる石)に埋まったと言う知らせを聞いたので、めまいを起こして倒れた。
この時、きよひこの父親がやって来て倒れてしまったさよこに声をかけた。
「さよこさん…どうしたのだね…さよこさん…」
この時、きよひこの父親は受話器を手に取って消防本部の人に聞いてみた。
「もしもし…かつひこが生き埋めになったって…本当なのですか!?もしもし…もしもし…」
ところ変わって、盛川の付近にあるセメント工場にて
工場の敷地内には、大船渡市の中央消防署の救助工作車がけたたましいサイレンを鳴らして次々と入っていた。
特大ダンプの運転手は、大パニックを起こしてサクラン状態におちいっていた。
現場が緊迫している中で、きよひこの父親とさよこが事故現場に到着した。
「かつひこ!!かつひこ!!かつひこ!!」
「あなた!!あなた!!」
きよひこの父親とさよこが現場に到着をした時、消防隊員たちの怒号と周辺の住民たちの悲痛な叫び声が聞こえていた。
それから80分後のことでああった。
かつひこがバラスの山から救助されたが、心肺停止の状態で体じゅうがボロボロに傷ついていた。
かつひこは、岩手県のドクターヘリに乗せられた後、盛岡へ向けて飛び立った。
「あなた!!あなた!!」
「かつひこ!!オーイかつひこ!!かつひこ!!」
怒り心頭になっていたきよひこの父親は、持っていたナイフで運転手の両目を切り裂いた。
「ああ!!」
「オラオドレ!!」
「目が見えない!!助けてくれぇ~」
ダンプの運転手は、きよひこの父親に両目を切り裂かれたので激しく苦しんでいた。
「思い知ったか!!かつひこのカタキだ!!ワーッ!!」
「義父さまやめて!!やめて!!」
「止めるな!!かつひこのカタキだ!!ワーッ!!ワーッ!!ワーッ!!」
その時に、激怒していた住民のみなさまが『殺せ!!殺せ!!殺せ!!』とシプレキコールをあげていた。
きよひこの父親は、住民たちのシプレキコールを受けて、ダンプカーの運転手をズタズタに刺して殺してしまった。
シプレキコールをあげていた住民たちが、事故を起こしたダンプカーをめちゃくちゃに壊すなどエスカレートしていた。
きよひこの父親はダンプの運転手を死なせた容疑でケーサツに逮捕された。
その間、住民たちによる大規模な暴動が発生したので、敷地内は非常に危険な状態におちいっていた。
その日の夜のことであった。
アタシとつばきちゃんはJR仙台駅の近くにあるジャンジャン横丁の居酒屋へ行って、酒をのみながら話をしていた。
つばきちゃんは、貿易会社を経営していたカレシにだまされたので怒り心頭になっているけども、どうしようもできないとアタシに言った後にグスングスンと泣いていた。
テーブルの上には、えだまめ・笹かまぼこ・冷やっこ・ポテトフライが置かれていた。
ふたりは、こんな会話をしていた。
「おカネがいるって…どうして急に…」
「あのね…まとまったおカネがどうしてもいるのよ…カレを助けてあげたいのよ…」
「カレを助けてあげたい…」
「うん…と言うよりも…カレが犯したあやまちの後始末をするためのおカネなのよ…塩竈(しおがま)で貿易会社を経営していたけど…事業に大失敗をして、大やけどをしてもうたの…その後始末をするためのおカネがいるのよ…」
つばきちゃんは、冷酒を一口のんでからアタシにこう言うた。
「カレ…2年前に勤めていた名取のビール工場の仕事をやめて…貿易会社を始めたのよ…だけど…カレは…会社の経営のノウハウが全くなかった…アタシ…正直言うて…だまされたのかもしれないと思ってはるのよ…アタシ…カレが商業高校を卒業して…松山の大学で経営学を学んだ知識を生かして会社を経営したいので資本金がいるって言うたのよ…1000万ユウヅウしてくれと言うてきたのよ…だけど…アタシの手持ちには…500万しかなかったんよ…カレは『500万でもいいからユウヅウしてくれ…』と言うてきたんよ…アタシは…500万を出す気はなかったんよ…せやけど、500万500万500万…って、カレはアタシにしつこく言うて来たのよ!!」
「500万…つばきちゃんは、500万円を何のためにためてはったのよ?」
「アレね、アタシがさいたまに新しく完成する予定の分譲マンションを購入するための頭金に取っていたのよ…アタシが、川崎のソープと西川口のファッションヘルスと鶯谷のデリヘル店で働いて貯めて…やっとの思いで貯めた500万なのよ…頭金はろたら、後は月々の分割払いで分譲マンションを買おうと思ってはったのよ…ところが、カレはアタシに『500万ユウヅウしてくれ…500万があれば資本金ができる…オレ…一生懸命にがんばって10倍以上増やす…もうかったら500万を倍にして返すけん…』言うて、覚え書きを書いて500万を貸したのよ…そのおカネが返ってきやへんのよ!!」
「ねえつばきちゃん、つばきちゃんはカレに貸した資本金の倍の金額がどうしてもいるというたわね…あんたもしかして…」
「言わなくてもわかるでしょ!!」
つばきちゃんは、にぎりこぶしを作って怒りを込めてテーブルをドスーン!!と叩いた後、タンブラに入っている冷酒をごくごくとのみほしてからアタシにこう言うた。
「アタシね…ろくでなしのカレの借金を背負わされたのよ…」
「カレの借金を背負わされたって…」
「アタシね…7000万の借金を…カレから押し付けられたのよ…7000万の借金を返すために大金がいるのよ…」
「7000万円…つばきちゃん…あんた払えるのそなな大金?」
「あのねこずえちゃん…ぶっちゃけた話だけど…カレの借金を返すのイヤなのよ…だけどね…債権者の男は『カレシの借金は恋人であるあんたが払うのだよ…』と凄まれたけん、どうすることもでけんのよ…松山の大学で経営学を学んだと言うのは大ウソで…本当は高校中退で、ビール工場の段ボールのはこおりの仕事しか知らない…貿易会社を経営したいのでビール工場をやめたことについては…キコエはいいけれど…実際は目上の人にたてつくだけたてついて…言葉づかいが悪いし…職場のマナーや規律に従わない…その上に…せっかく就職したビール工場の親会社の役員を呼び捨てで呼んだ上に、会社の経営方針を痛烈に批判して、工場の従業員さんたちとも揉め事ばかりを起こしてクビになったのよ…カレは…会社経営だなんてウソをついてね…昼間から酒をあおってばかりいたのよ…」
「500万円は…酒をのむためのおカネだったのね…」
「言わなくてもわかるでしょ!!アイツは会社経営のイロハが全くわからへんのよ!!大金に目がくらんだけん、ありったけのおカネを使って大酒のんだんよ。」
「サイアクね…それじゃ…カレが作った借金の使い道は…」
「言わなくてもわかるでしょ!!お酒をのむためのおカネなのよ!!アイツはもうアル中になったまま蒸発してはるけん、発見されても親族たちから見放されとるからもうアカンと思うわよ…あいつ、ヤクザの事務所に出入りしてバクチもしよったし、組長の女にもてぇつけとるし…おまけに上納金(くみのゼニ)を盗んでトンズラしてけん、アイツは近い将来コンクリ詰めにされて名取川(かこう)にドボーンかチャカでドタマぶち抜かれるかよ…カレは殺されてもかまんけど、問題はアタシが背負ってしまった借金なのよ…こずえちゃんお願い…助けてよ…」
「そうね…」
アタシはこの時、きよひことかつひこが亡くなった時におりる1億8000万円の保険金の生命保険の証書を持っていたので、その中からかつひこの保険金の請求に必要な証書をつばきちゃんに手渡すことを決めた。
そして、次の日の朝のことであった。
アタシは、つばきちゃんをアパートの部屋に呼び出した。
アタシは、つばきちゃんにかつひこの生命保険の証書を出した後、こう伝えた。
「つばきちゃん…きよひこの兄が…大船渡のセメント工場で作業中に労災事故で亡くなったけん、生命保険の証書を出すわよ…受取人の欄につばきちゃんの名前を書いて…連休明けになったら保険屋さんにそれ持って行きなさい…1億8000万円がおりるわよ…」
「こずえちゃん、こんなことをしてもいいの?」
「つばきちゃん!!…あんたね!!このままだと一生借金に苦しめられてしまうのよ…それでもいいの!?」
「イヤよ…そんなんイヤ…」
「だったら、生命保険の証書を受け取ってよ…つばきちゃんは、保険金の受取人の欄に名前を書いて、連休明けになったら保険屋さんに請求に行くのよ…その時は、かつひこに暴力をふるわれて大ケガを負ったから当面の生活費がいると言えばいいのよ…つばきちゃん!?」
アタシの問いに対して、つばきちゃんは『分かった…』と答えて、かつひこの生命保険の証書の保険金の受取人の欄につばきちゃんの名前を書いた。
「こずえちゃん…ありがとう…あの…アタシ…きちんとおカネは…返すから…」
「えっ?何を言い出すのかな?」
「だから、こずえちゃんに無理をお願いしたのだから…きちんとおカネを返さないと…」
「いいのよそんなことは…それよりも連休明けになったら保険屋さんに行くのよ!!分かったかしら!!」
「うん…分かった…」
つばきちゃんは、生命保険の証書を受け取ってバッグの中にしまった後、部屋を出ていった。
しかし、アタシはかつひこの生命保険の証書をつばきちゃんに与えたことが原因でめんどうなことに巻き込まれようとしていたことに気がついていなかったので、気がついた時にはあとのまつりであった。
きよひこは、11月20日に兄・かつひこと大ゲンカを起こした後家出をして行方不明になっていた。
心配になったさよこは、きよひこの知人の家に手当たり次第に電話をかけて、きよひこが来ていないかどうかをたずねていた。
きよひこが行方不明になっていたので、さよこやきよひこの父親は心配になっていた。
知人の家に滞在をしていない…
大船渡市の中心部や周辺の釜石市や陸前高田市や気仙沼市にはきよひこの知人がいない…
そこへ、虫の知らせを告げる電話のベルが鳴った。
(チリリリリン…チリリリリン…チリリリリン…チリリリリン…ガチャッ…)
さよこは、不安げな表情で電話に出てみた。
「もしもし…大船渡市の消防本部がうちに何の用でしょうか…かつひこがイキウメ…イキウメ…いきうめ…」
さよこは、大船渡市内にあるセメント工場内で作業中のかつひこが特大ダンプに積まれていたバラス(コンクリートにまぜる石)に埋まったと言う知らせを聞いたので、めまいを起こして倒れた。
この時、きよひこの父親がやって来て倒れてしまったさよこに声をかけた。
「さよこさん…どうしたのだね…さよこさん…」
この時、きよひこの父親は受話器を手に取って消防本部の人に聞いてみた。
「もしもし…かつひこが生き埋めになったって…本当なのですか!?もしもし…もしもし…」
ところ変わって、盛川の付近にあるセメント工場にて
工場の敷地内には、大船渡市の中央消防署の救助工作車がけたたましいサイレンを鳴らして次々と入っていた。
特大ダンプの運転手は、大パニックを起こしてサクラン状態におちいっていた。
現場が緊迫している中で、きよひこの父親とさよこが事故現場に到着した。
「かつひこ!!かつひこ!!かつひこ!!」
「あなた!!あなた!!」
きよひこの父親とさよこが現場に到着をした時、消防隊員たちの怒号と周辺の住民たちの悲痛な叫び声が聞こえていた。
それから80分後のことでああった。
かつひこがバラスの山から救助されたが、心肺停止の状態で体じゅうがボロボロに傷ついていた。
かつひこは、岩手県のドクターヘリに乗せられた後、盛岡へ向けて飛び立った。
「あなた!!あなた!!」
「かつひこ!!オーイかつひこ!!かつひこ!!」
怒り心頭になっていたきよひこの父親は、持っていたナイフで運転手の両目を切り裂いた。
「ああ!!」
「オラオドレ!!」
「目が見えない!!助けてくれぇ~」
ダンプの運転手は、きよひこの父親に両目を切り裂かれたので激しく苦しんでいた。
「思い知ったか!!かつひこのカタキだ!!ワーッ!!」
「義父さまやめて!!やめて!!」
「止めるな!!かつひこのカタキだ!!ワーッ!!ワーッ!!ワーッ!!」
その時に、激怒していた住民のみなさまが『殺せ!!殺せ!!殺せ!!』とシプレキコールをあげていた。
きよひこの父親は、住民たちのシプレキコールを受けて、ダンプカーの運転手をズタズタに刺して殺してしまった。
シプレキコールをあげていた住民たちが、事故を起こしたダンプカーをめちゃくちゃに壊すなどエスカレートしていた。
きよひこの父親はダンプの運転手を死なせた容疑でケーサツに逮捕された。
その間、住民たちによる大規模な暴動が発生したので、敷地内は非常に危険な状態におちいっていた。
その日の夜のことであった。
アタシとつばきちゃんはJR仙台駅の近くにあるジャンジャン横丁の居酒屋へ行って、酒をのみながら話をしていた。
つばきちゃんは、貿易会社を経営していたカレシにだまされたので怒り心頭になっているけども、どうしようもできないとアタシに言った後にグスングスンと泣いていた。
テーブルの上には、えだまめ・笹かまぼこ・冷やっこ・ポテトフライが置かれていた。
ふたりは、こんな会話をしていた。
「おカネがいるって…どうして急に…」
「あのね…まとまったおカネがどうしてもいるのよ…カレを助けてあげたいのよ…」
「カレを助けてあげたい…」
「うん…と言うよりも…カレが犯したあやまちの後始末をするためのおカネなのよ…塩竈(しおがま)で貿易会社を経営していたけど…事業に大失敗をして、大やけどをしてもうたの…その後始末をするためのおカネがいるのよ…」
つばきちゃんは、冷酒を一口のんでからアタシにこう言うた。
「カレ…2年前に勤めていた名取のビール工場の仕事をやめて…貿易会社を始めたのよ…だけど…カレは…会社の経営のノウハウが全くなかった…アタシ…正直言うて…だまされたのかもしれないと思ってはるのよ…アタシ…カレが商業高校を卒業して…松山の大学で経営学を学んだ知識を生かして会社を経営したいので資本金がいるって言うたのよ…1000万ユウヅウしてくれと言うてきたのよ…だけど…アタシの手持ちには…500万しかなかったんよ…カレは『500万でもいいからユウヅウしてくれ…』と言うてきたんよ…アタシは…500万を出す気はなかったんよ…せやけど、500万500万500万…って、カレはアタシにしつこく言うて来たのよ!!」
「500万…つばきちゃんは、500万円を何のためにためてはったのよ?」
「アレね、アタシがさいたまに新しく完成する予定の分譲マンションを購入するための頭金に取っていたのよ…アタシが、川崎のソープと西川口のファッションヘルスと鶯谷のデリヘル店で働いて貯めて…やっとの思いで貯めた500万なのよ…頭金はろたら、後は月々の分割払いで分譲マンションを買おうと思ってはったのよ…ところが、カレはアタシに『500万ユウヅウしてくれ…500万があれば資本金ができる…オレ…一生懸命にがんばって10倍以上増やす…もうかったら500万を倍にして返すけん…』言うて、覚え書きを書いて500万を貸したのよ…そのおカネが返ってきやへんのよ!!」
「ねえつばきちゃん、つばきちゃんはカレに貸した資本金の倍の金額がどうしてもいるというたわね…あんたもしかして…」
「言わなくてもわかるでしょ!!」
つばきちゃんは、にぎりこぶしを作って怒りを込めてテーブルをドスーン!!と叩いた後、タンブラに入っている冷酒をごくごくとのみほしてからアタシにこう言うた。
「アタシね…ろくでなしのカレの借金を背負わされたのよ…」
「カレの借金を背負わされたって…」
「アタシね…7000万の借金を…カレから押し付けられたのよ…7000万の借金を返すために大金がいるのよ…」
「7000万円…つばきちゃん…あんた払えるのそなな大金?」
「あのねこずえちゃん…ぶっちゃけた話だけど…カレの借金を返すのイヤなのよ…だけどね…債権者の男は『カレシの借金は恋人であるあんたが払うのだよ…』と凄まれたけん、どうすることもでけんのよ…松山の大学で経営学を学んだと言うのは大ウソで…本当は高校中退で、ビール工場の段ボールのはこおりの仕事しか知らない…貿易会社を経営したいのでビール工場をやめたことについては…キコエはいいけれど…実際は目上の人にたてつくだけたてついて…言葉づかいが悪いし…職場のマナーや規律に従わない…その上に…せっかく就職したビール工場の親会社の役員を呼び捨てで呼んだ上に、会社の経営方針を痛烈に批判して、工場の従業員さんたちとも揉め事ばかりを起こしてクビになったのよ…カレは…会社経営だなんてウソをついてね…昼間から酒をあおってばかりいたのよ…」
「500万円は…酒をのむためのおカネだったのね…」
「言わなくてもわかるでしょ!!アイツは会社経営のイロハが全くわからへんのよ!!大金に目がくらんだけん、ありったけのおカネを使って大酒のんだんよ。」
「サイアクね…それじゃ…カレが作った借金の使い道は…」
「言わなくてもわかるでしょ!!お酒をのむためのおカネなのよ!!アイツはもうアル中になったまま蒸発してはるけん、発見されても親族たちから見放されとるからもうアカンと思うわよ…あいつ、ヤクザの事務所に出入りしてバクチもしよったし、組長の女にもてぇつけとるし…おまけに上納金(くみのゼニ)を盗んでトンズラしてけん、アイツは近い将来コンクリ詰めにされて名取川(かこう)にドボーンかチャカでドタマぶち抜かれるかよ…カレは殺されてもかまんけど、問題はアタシが背負ってしまった借金なのよ…こずえちゃんお願い…助けてよ…」
「そうね…」
アタシはこの時、きよひことかつひこが亡くなった時におりる1億8000万円の保険金の生命保険の証書を持っていたので、その中からかつひこの保険金の請求に必要な証書をつばきちゃんに手渡すことを決めた。
そして、次の日の朝のことであった。
アタシは、つばきちゃんをアパートの部屋に呼び出した。
アタシは、つばきちゃんにかつひこの生命保険の証書を出した後、こう伝えた。
「つばきちゃん…きよひこの兄が…大船渡のセメント工場で作業中に労災事故で亡くなったけん、生命保険の証書を出すわよ…受取人の欄につばきちゃんの名前を書いて…連休明けになったら保険屋さんにそれ持って行きなさい…1億8000万円がおりるわよ…」
「こずえちゃん、こんなことをしてもいいの?」
「つばきちゃん!!…あんたね!!このままだと一生借金に苦しめられてしまうのよ…それでもいいの!?」
「イヤよ…そんなんイヤ…」
「だったら、生命保険の証書を受け取ってよ…つばきちゃんは、保険金の受取人の欄に名前を書いて、連休明けになったら保険屋さんに請求に行くのよ…その時は、かつひこに暴力をふるわれて大ケガを負ったから当面の生活費がいると言えばいいのよ…つばきちゃん!?」
アタシの問いに対して、つばきちゃんは『分かった…』と答えて、かつひこの生命保険の証書の保険金の受取人の欄につばきちゃんの名前を書いた。
「こずえちゃん…ありがとう…あの…アタシ…きちんとおカネは…返すから…」
「えっ?何を言い出すのかな?」
「だから、こずえちゃんに無理をお願いしたのだから…きちんとおカネを返さないと…」
「いいのよそんなことは…それよりも連休明けになったら保険屋さんに行くのよ!!分かったかしら!!」
「うん…分かった…」
つばきちゃんは、生命保険の証書を受け取ってバッグの中にしまった後、部屋を出ていった。
しかし、アタシはかつひこの生命保険の証書をつばきちゃんに与えたことが原因でめんどうなことに巻き込まれようとしていたことに気がついていなかったので、気がついた時にはあとのまつりであった。