【女の事件】続黒煙のレクイエム
第20話
はるよしとの結婚生活が破綻したこととはるよしの親きょうだいや親族との間で深刻な対立を起こして潮来市にいることができなくなったアタシは、再び東京へやって来たが、この先どのようにすればよいのか分かずに途方にくれていた。

時は、夕方5時過ぎのことであった。

アタシは、上野公園の不忍池(しのばすのいけ)の付近にあるベンチにひとりぼっちで座って、夕暮れの空を見つめながらぼんやりと考え事をしていた。

アタシは…

何のために再婚をしたのかな…

アタシは…

これで何回リコンをしたのかな…

忘れてしまったみたい…

そんなことを思えば思うほど、アタシは悲しくなっていた。

その日の夜のことであった。

アタシは、今夜の寝るところを探すためにアメ横の通りからガードの向こう側にあるカプセルホテルが立ち並んでいる通りを歩いていた。

JRの高架橋の近くの通りを歩いていたアタシは、気持ちがあせっていた。

そんな時であった。

アタシは、2年ほど前に仙台で別れたつばきちゃんとアメ横センタービル前で再会をした。

つばきちゃんは、2年ほど前に仙台の均当台公園できよひことめいこを刃物で刺して殺した事件と多賀城市内のパチンコ店で乱闘騒ぎを起こしたあげくに、殺人事件を起こした容疑でケーサツに逮捕されていたが、仙台地検に向かう途中の護送車から脱走をして行方不明になっていた。

つばきちゃんは、髪の毛がボロボロになっている上に衣服も1年7ヶ月近くも着替えていないので、ホイト(こじき)になっていた。

アタシは、ホイトになってしまったつばきちゃんに声をかけた。

「つ…つばきちゃん…」
「こずえちゃん…」
「つばきちゃん…一体どうしたのよ…どうやって東京まで来たのよ?」
「こずえちゃん…お腹がすいたよ…なんか食べたいよ…」

つばきちゃんは悲しい表情でごはんが食べたいと言うていたので、アタシはJR御徒町駅の近くにあるローソンに行って、食べ物を買いに行った。

この時で、新しく来たお弁当を入れ替える作業が終わっていたので、古い方のお弁当をたくさんいただいた。

おにぎり・サンドイッチ・パスタなど…

アタシは、手当たり次第に賞味期限切れのお弁当を受け取った後、つばきちゃんが待っているアメ横センタービルの前に戻った。

アタシは、つばきちゃんに賞味期限切れのお弁当を差しだした。

つばきちゃんは、賞味期限切れのお弁当を受け取った後、ガツガツと食べていた。

つばきちゃんは、アタシに多賀城市からどうやって東京まで来たのかを説明した。

「あのねこずえちゃん…アタシ、護送車から脱走をした後…東北本線の線路をたどってここまで逃げてきたの…仙台へ向かう途中の護送車が故障をして…警察官たちがパニクっているときに脱走をしたのよ…線路をたどって、白河まで逃げたの…白河で暮らしている知人の家に一時滞在をしていたの…それから、宇都宮→前橋→高崎→熊谷→浦和と転々として暮らしていたわ…東京に着いたのは…いつだったか…忘れた…」
「それじゃあ、東京に着くまでの間、ホイトの暮らしをしていたのね。」
「うん。」

つばきちゃんは、このあともアタシに今までどのようにしていたのかを分かるように説明をした。

アタシはこのあと、はるよしと離婚をしたことをつばきちゃんに話した。

つばきちゃんは、アタシが離婚をしたこと聞いたあと、フーンと言う表情で言うた。

「こずえちゃん…あんたこれで何回目になるのかしら…離婚の回数…」
「さあ…もう忘れてしもたわ…だけど…今回の離婚はサイアクだわ…義父が東海道新幹線の車内で放火事件を起こして自爆をした…義弟は、居酒屋でやくざの若頭を死なせた事件を起こしてケーサツとチンピラから追われる身になった…ダンナはダンナで…気に入らなかったらアタシにきつい暴力をふるう…今朝ね…ダンナに顔を殴られて大ケガを負ったわよ…アタシがおとうふのみそしるを作らなかったけん、近所の家からいただいた残り物のいりどうふを出したのよ…そしたら、ダンナはアタシに『オドレは近所の家の残飯をあさってきたのか!!』とねじ込んで来たのよ…つばきちゃん…アタシの右のほほを見て…ダンナにきつい暴力をふるわれて大ケガを負ったあとよ…」

アタシは、右のほほにできているやけどを負ったような傷あとをつばきちゃんに見せた。

つばきちゃんは、大きくため息をついてからアタシにこう言うた。

「またきつい暴力を受けてしまったのね…こずえちゃん…こずえちゃんは最初から結婚をする資格なんかなかったのよ…と言うよりも、結婚をする事自体が禁止になっていたのよ…また周囲の意見に流されるがままに結婚をしたけん失敗をしたのでしょ…今回は、東海道新幹線の車内で義父が放火事件を起こした…最大の原因は…2ヶ月前に亡くなった娘さんの花嫁姿を見たかったといじけていた…その中で、こずえちゃんが長男の嫁になった…そのことが原因でますますはぶてていた…その結果、自暴自棄におちいって新幹線の車内で放火事件を起こして、自爆騒ぎを起こした…と言うことよね…こずえちゃん、今度こそは自分の気持ちをしっかりと持ちなよ…弱い気持ちをズルズルと引きずっていたら、また同じことの繰り返しになるわよ…」

アタシにこう言うたつばきちゃんは、賞味期限切れのお弁当をガツガツと食べていた。

アタシは、つばきちゃんから気持ちをしっかりと持ちなよと言われたが、どうせいと言うのか、わからなくなっていた。

その日の夜は、カプセルホテルを探すのをやめて、つばきちゃんと一緒にアメ横センタービルの前で野宿をして、一夜を明かした。
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