【女の事件】続黒煙のレクイエム
第21話
東京に再びやって来てから数日後のことであった。

アタシは、京都で舞妓はんをしていた時に仲良しであった知人が暮らしているアパートに転がりこんだ後、知人からの紹介で再びバイト生活を始めることにした。

アタシは、朝は湯島3丁目にあるカプセルホテルのリネンのお仕事をして、昼は上野駅付近にあるエスパス日拓(パチンコ屋さん)のフロアと水回り清掃のお仕事、夜は上野3丁目のローソンのお仕事の3つをかけもちしておカネを稼ぐことにした。

朝から晩まで働きずくめの毎日であったが、足りない分は、東京ドームでプロ野球の試合が開催される日に内野スタンドでビールの売り子さんをしたり、都内のデリヘル店などで働いて生きて行くためのおカネを稼いでいた。

今のアタシは、はるよしのことを一生うらみとおすことしか頭になかったので、例えはるよしの親きょうだいや親族がお願いに来てもアタシはあの家には戻らないと決意していた。

どんなにあやまっても、はるよしのことは一生こらえへん…

その一方で、アタシに去られたはるよしは、仕事がうまく行かへんかったけん、気落ちしていた。

夕方5時半過ぎのことであった。

はるよしは、利根川の河川敷の公園のベンチにひとりぼっちで座ってぼんやりと考え事をしていた。

そんな時であったが、はるよしが勤務している職場の近くのクリーニング屋さんで事務の仕事をしている静子(24歳)がはるよしの元にやって来た。

静子は、はるよしに優しく声をかけた。

「はるよしさん。」
「静子…」
「どうしたの…」
「静子…むなしいのだよ…」
「奥さんと離婚をしてからまだ時間がたっていないから、気持ちがむなしくなっているのね…」
「静子…」

静子は、はるよしの背中を優しく抱きしめながらこう言うた。

「はるよしさん…アタシが、お嫁さんになってあげる…アタシ…あなたのそばにいたいの…」

はるよしは、静子の優しさにかんきわまって泣いていた。

その日の夜、はるよしと静子はJR潮来駅の近くにあるラブホへ行って、一夜を過ごした。

ベッドの中で、はるよしは静子に無我夢中で甘えていた。

静子は、はるよしと結婚をしてはるよしのことを一生をかけて愛して行こうと決めたのと同時に、職場の人から紹介されたお見合い相手の男性と別れることを決断した。

それから7日後のことであった。

はるよしは、アタシが婚姻届を出していないことをいいことに静子と入籍をして、家につれてきた。

はるよしは母親に静子を紹介した後に『もう入籍をしたから…こずえとはきれいに別れたから…』と突き放すような声で言うたけん、気持ちが動揺していた。

母親は、はるよしにどうして勝手なことをしたのかを問い詰めた。

しかし、はるよしは『かあさんは…オレが結婚できない原因を作っておいて、なんなのだよ!?』と居直った声で言うたけん、母親は対処することができなくなった。

母親は、はるよしのわがままに屈して、静子とはるよしの入籍を認めた。

それなのに、入籍してから数日後に結婚生活ヤーメタと言うて、早々と放棄した。

その後、はるよしは他の女と平気で浮気をするようになった。

あいつは、とうとうソコナシ沼に落ち込んでズルズルと引きずられていたけん、どうしようもないクソ野郎になっていた。
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