【女の事件】続黒煙のレクイエム
第5話
アタシが家出して、好きなカノジョと入籍を果たしたけんめでたしめでたしと思っているきよひこは、入籍をしてからわずか数日であきてしまったようだ。

この時、きよひこの自分勝手がさらにエスカレートをしていた。

きよひこは、同じ職場の部署で働いているOLのちづる(21歳)のことが気になっていたので、毎朝のようにカノジョを車で迎えに行って一緒に職場へ出勤をしていた。

ちづるは、1歳の時に東日本大震災による巨大津波で荒浜地区(仙台市若林区)にあった家と両親をなくしていた。

ちづるは、震災が発生した時仙台市の中心部にある保育所に保母さんたちと一緒にいたので巨大津波から逃れたが、両親と家をなくしたので一ノ関の児童養護施設で子供時代を過ごした。

高校を卒業後に大船渡市内のJFに就職した。

ちからになることがあれば助けてあげたいときよひこは思っていたので、毎朝のようにカノジョが暮らしているマンションへ行って送り迎えをしていた。

10月31日の夕方6時過ぎのことであった。

仕事を終えて、職場からちづるが暮らしているマンションへ車で向かう途中のことであった。

きよひこがちづるに『夕暮れの海をながめながらゆっくりお話がしたいなぁ…』と言うたので、きよひこはちづるを連れて大船渡町欠ノ下向(おおふなとちょうかけのしたむかい)にある港の岸壁まで車で行った。

ふたりは、夕暮れの海をながめながらお話をしていた。

「課長…」
「どうしたのかな?」
「課長は、アタシにどうして優しくしてくださるのでしょうか…毎朝毎朝…アタシを車で送り迎えをしてくださって…朝ごはんのサンドイッチを与えてくださって…気持ちはうれしいのですが…」
「気持ちはうれしいけれど…不都合なことでもあるのかなぁ…」
「アタシが…東日本大震災で親と家をなくした震災孤児だから、毎朝アタシを送り迎えしているのですか?」
「ぼくは、君のことが心配だから、助けてあげたいのだよ。」
「ですが、課長には奥さまがいらっしゃるのでは…」
「ああ…ごずえのことか…ごずえはオレを差別したし、子供が産めん身体で役立たずだからボコボコに殴って追い出した…めいこも、家庭のことをなまけていたから追いだした…」
「だからといって、毎朝毎朝マンションに来られたらメイワクです。」
「何を言うのかね…ぼくは君をひとりぼっちにさせたくないのだよ…ぼくは厚意で送り迎えをしているのだよ。」
「それって…アタシのことが好きだと言うことですか?」
「そうだよ…ぼくは、君のことが好きなのだよ…君を守りたいのだよ。」

きよひこは、ちづるに『君を守りたいのだよぉ…』と言うてはったが、その前にめいこやアタシのことをボロクソに言うだけ言いまくていた。

それから3時間後のことであった。

きよひことちづるは、大船渡プラザホテルに行って、ベッドルームで抱き合っていた。

きよひこは、ちづるのことが放ってないので一生をかけて守ることを決意した。

だから、めいこにきつい暴力をふるうようになった。

めいこは出産を控えて、体を大切にしないといけない時期なのに、きよひこはめいこに『オレに預ければ大丈夫だよ…』と言うて母子手帳や健康保険証などを取り上げるなどして、暴力をふるっていた。

11月2日頃に、きよひこは家にちづるを連れてきて『ちづると入籍をするから離婚をしてくれ。』と投げやりな声で言うたあと、離婚届けにサインをさせたあと、ちづるとの婚姻届けの保証人の欄にめいこの名前を書かせたことがオモテザタになった。

それを聞いためいこの両親がものすごい血相できよひこの家に怒鳴りこんできたので、きわめて危険な状況におちいった。

その日の夜、めいこはアタシがバイトをしているセブンイレブンにやって来た。

めいこはアタシに助けを求めていたが、アタシはめいこを助けることができんと言うて怒っていた。

アタシは、外のゴミ箱の整理をしながらめいこに怒っていた。

「あんたね!!アタシがシキュウキンシュで赤ちゃんを生むことができんと言うてアタシのことを小バカにするだけ小バカにしておいて、あとになって助けてくれだなんてムシがよすぎるわよ!!アタシはね!!あんたのことを助けることはでけんけん…アタシはバイト中で忙しいのよ!!用がないのだったら帰ってくれるかしら!!」
「こずえさん…アタシは今ものすごく困っているのです…きよひこさんはアタシに『オレに預かければ大丈夫だよ…信じてくれ。』と言うたから母子手帳と健康保険証を預けたのよ…あさっての6ヶ月検診に行くのに母子手帳と健康保険証がなかったら検診を受けることができないので、困っているのよ…こずえさん、きよひこさんにガツンと言ってください…お願いです…」
「あのね!!アイツはね、アタシがガツンと言うても、言うことなんぞ聞かへんクソタワケ野郎なのよ!!アタシがガツンと言うてもアカンのなら、お兄もアカン!!オヤジは父親の権威をシッツイしてはるけん、虫ケラ以下のゲジゲジよ!!アタシは、きよひこの家の親族を呪い殺すことを決意したわ!!あんたは、きよひこからきつい暴力を受けてもくやしいと思わへんのかしら!?」
「アタシは…こずえさんのように…呪うことできない…」
「だからあんたはきよひこのわがままに屈したのでしょ!!違うかしら!?」
「きよひこさんのわがままに屈した…」
「あんたね!!同じ職場にいたちづると言う女からも見下されていると言うことに気がついてへんみたいね!!ちづるに見下されてくやしいとは思わへんのかしら!?」
「ちづるさんは…震災孤児だから…」
「だからあんたはなさけないのよ!!そういう弱い気持ちが原因できよひことちづるから見下されていることにゼンゼン気がついてへんのよ!!アタシが言うてはることがちごとる(違っいる)かしら!?」
「こずえさん…」
「あんたね!!アタシはバイト中で忙しいのよ!!そんな時に突然フラりとやって来てアタシにグダグダグダグダグダグダグダグダ…泣き言を言わんといてや!!アタシ、思い切り怒ってはるのよ!!あんたね!!店に居座って営業妨害をするのだったら、考えがあるわよ!!」
「店に居座る気はありません。」
「せやったら帰んなさいよ!!」
「帰るわよぉ…」
「動きなさいよ!!」
「動くわよ…だけどこのままでは帰ることができないのです。」
「帰んなさいよと言うてはるのにどうして動かないのよ!?」
「このままでは帰ることができないのです。」
「はぐいたらしい(むかつく)わねあんたは!!店に居座って営業妨害をする気なのね!!」
「営業妨害をしていません。」
「営業妨害をしてはるじゃないのよ!!」
「だから、アタシのことを助けてほしいのです…アタシのことを助けてあげると言うてくだされば帰ります…ひとことでもいいから言ってください。」
「甘ったれるんじゃないわよ!!アタシはあんたのことを助ける余力なんかないけん!!」
「どうしてなのですか?アタシは、きよひこさんから暴力をふるわれたのよ…暴力をふるわれて傷ついているのよ。」
「はぐいたらしい(イライラする)わね!!あんたこそね!!アタシにきつい暴力をふるっておいて、よくそんなクソたわけたことが言えるわね!!もう怒ったわよ!!アタシ、今から神戸で暮らしている知人に電話するけん!!知人に電話して、きよひこの家とあんたの実家にヤクザを送り込んでくれと頼むけん!!逃げるなよ!!」

アタシはスマホを取り出して、神戸で暮らしている知人にめいこが店に居座って営業妨害をしたけん、きよひことめいこの実家にヤクザを送れと頼んでいた。

めいこは、ヤクザがこわいと言うてその場から走って逃げていった。

何なのかしら一体…

店に居座って営業妨害をしておいて…

何が助けてくれなのよ…

めいこはアタシのことをどこまでグロウする気でいるのかしら…

アタシは、ヤクザに殺されることを恐れて逃げていっためいこを冷めた目付きで見つめていた。
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