君の隣にいるのはずっと私だと思ってた
君の隣にいるのはずっと私だと思ってた
 男女二人が手を繋いで仲良く歩いている。
 男は綺麗に切り揃えられた黒髪に光がきらきらと反射している。顔も綺麗に整っていて、優しげにそして愛しそうな目差しで女を見ている。

 女は男とは違い、髪も肌も手入れをしているようだがお世辞にも可愛いとは言えない。身長は男よりも二十センチくらい低く、少し上向きになりながら男の話を楽しそうに聞いている。

 共通点といえば、男も女も同じ高校の制服を身に纏っていることと、バッグにお揃いのストラップをつけていることくらい。


 そして、そんな男女を陰から恨めしそうに見ている女がいる。
 彼女の名前は 倉本朱夏(くらもと あやか)。黒髪を胸元まで伸ばし、少し癖毛だがそれがいい感じに巻いたようになっている。目もぱっちりとしていて、可愛らしい顔立ちをした少女だ。

 幼馴染みの男―― 榎本尚(えのもと なお)のことが幼い頃から好きだった。そして向こうも自分のことが好きだと思っていたので、告白はされていないが実質的には付き合っているのだと思っていた。
 だから他の女はモブだと思っていたし、他の男もどうでもよかった。


 なのに、いきなり女―― 春川香菜(はるかわ かな)が現れ、あろうことか香菜と付き合ってしまった。
 二人の出会いは香菜が悪そうな連中に絡まれているところを尚に助けられたというものだ。それで香菜が尚に惚れ告白し、尚がオーケーを出してしまった。

 香菜が自分から告白するような子だと思わず、しかも自分より可愛くないことで完全に油断しきったときの出来事だった。
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