君の隣にいるのはずっと私だと思ってた
「それで、香菜はあいつのこと本当に許すの?」
「うん。謝ってくれたし、そもそも私が倉本さんに挑発めいたこと言っちゃったのが悪いから」
「そっか」
そこで再度、彼は朱夏の方を向く。
「香菜は許してくれたかもしれないけど、俺はお前のことまだ許せない」
完璧に尚に嫌われてしまったのだと思い、今度こそ朱夏は泣いてしまう。泣いてしまった朱夏に対して尚は慌てて
「何泣いてんだよ。許しはしないけど、不思議なことに香菜に酷いこと言ったお前のこと、嫌いになってないんだよ」
「え?」
「だってお前昔から寂しがりやだろ? だから、付き合いが一番長い俺が誰かにとられたって思ったから香菜にあんなこと言ったんだろ?」
「え?」
「違うのか?」
尚は昔から自分に向けられる好意に鈍感だ。
だから朱夏は小さい頃はよく、尚のことを好きな女子に「尚は私のもの」だと言い、尚に近づけさせないようにしていた。尚が鈍感なことと、朱夏がそういうのに尚限定で敏感だったことで出来たものだ。
確かに告白はしたことない。
でも自分の気持ちにまさか気づいていないとは思わず、朱夏は驚きのあまり固まる。
幼馴染みをとられたから自分が怒った。ただの幼馴染みがとられただけだったら、こんなに怒らない。
あまりに尚が鈍感すぎて朱夏は呆れてしまう。