君の隣にいるのはずっと私だと思ってた
 その日の夜。
 朱夏はいつも以上にスッキリとした気持ちで、ベッドの上に転がっていた。

 言いたいことを香菜に言えたし、何よりも尚と自分との時間を作ってくれると彼本人が言ってくれたことが嬉しくて、朱夏は自然と頬が緩むのを感じる。

 自分の気持ちには気づいてくれなかったが、尚と二人きりの時間を確保できたのだ。
 それはつまり尚を取り戻すことが出来る機会ができたということ。

 彼は今は香菜に惚れて付き合っている。でも、これからまだまだ彼にアピールする時間はあるし、香菜から奪うことも可能である、と朱夏は考えている。


 根拠なんてものはない。ただ単に諦めきれないだけ。

 それもそうだろう。
 ものごころついた時には、尚と一緒にいるのは当たり前だった。尚の隣にはいつも朱夏がいた。
 そして、いつからかは覚えていないが、いつの間にか彼のことを好きになった。

 少なくても十年以上は尚に片想いしている。人生の半分以上は尚に恋をしているのだ。

 だからこそぽっと出の香菜に彼を奪われたことが悔しかったし、認めたくない。それは今日の出来事があっても変わらない。

 だから朱夏は絶対に尚に好きになってもらうぞ、と一人意気込んでいた。
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