君の隣にいるのはずっと私だと思ってた

「どうしてそう思ったの?」


 朱夏は冷静を装いながら言うが、大きな目をいつもより吊り上げていて、端から見れば怒っているのがバレバレだ。そんな朱夏の様子に苦笑しながら


「だって尚くんのこと見てるときの倉本さん、恋してる人の顔してるもん」


 お前にだけはそんなこと言われたくないと思いながらも、出来るだけ声色に怒りを出さないように気を付けながら朱夏は言う。


「そう。……なら、私に尚返してくれないかな? 私の方が先に尚のこと好きになったし、私の方が尚とお似合いだと思うの」

「それは無理だよ。確かに倉本さんの方が尚くんとお似合いかもしれない。でも、私も尚くん好きなの。……それにね、私思うんだけど、先に好きになったとかは関係ないと思うな」

「じゃあ、あんたは尚のどこがよくて付き合ってるの? 私は、尚の普段は呑気そうで頼りにならなさそうなのに、いざというときは私のこと助けてくれるとことか、勉強でわからないとこがあったら教えてくれるとことか。ううん、尚の全部が好き。それで、一緒にいるだけで落ち着いて、心が安らぐの。そんな風に思えるのは、今まで尚だけで……。でも、あんたには他にもいるでしょ? 私には尚しかいないの。尚じゃなかったら駄目なの。なのに、ぽっと出のあんたが尚のこととらないでよ!」


 香菜の返事に苛立ち、朱夏は彼女を睨み付けながらそう言うが、香菜はその穏やかな表情まま静かに


「倉本さんが尚くんのことどれだけ好きかはわかったよ。確かに私は今まで尚くん以外の人を好きになったことあるよ」


 それなら尚のことを返せ、ともう一度言おうとするが先に彼女が口を開く。
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