君の隣にいるのはずっと私だと思ってた
「でも、今は尚くんだけなの。倉本さんにとって私はただの邪魔者だと思う。でも、私だって本気なの。本気で尚くんのこと好きなの。だから尚くんの隣にいても恥ずかしくないように、したこともないメイクしてみたり、髪もアレンジしてみたり、肌のケアも今まで以上に頑張ってるの」
そんなのは関係ない。朱夏だって、尚に可愛いと思われたくてファッションに気をつけたり、髪のケア、肌のケア、他にも色んなことを気をつけてる。その努力はきっと香菜よりも凄いはずだし、他の女子に負ける気がしない。
それに、好きな人がいるならそれぐらい当たり前だろ、と心の中で毒を吐きながら香菜の話を聞く。
「だから倉本さんには悪いけど、尚くんのことは諦めてほしいな。私のわがままなのは重々承知のうえでのお願いです。尚くんのこと諦めてください。お願いします」
そう言い、香菜は頭を下げる。
そんな香菜を見て朱夏はイライラしてしまい、そのまま彼女のことを殴りたい衝動にかられる。
どうして自分が諦めなければいけないのか、どうして尚はこんな奴のことが好きなのか、どうして私を選んでくれなかったのか。そんなことを思い、朱夏は
「ふざけないでよ!」
と大声で叫ぶ。
その声に香菜が頭を上げる。彼女の表情を見て、香菜は思わず「ひっ」と声を出してしまう。
朱夏は香菜のことを思いきり睨み、そのまま殴りかかりそうな勢いで香菜に近づく。香菜は後退り、朱夏もその分距離をつめる。
そして香菜を壁際まで追いつめる。