君の隣にいるのはずっと私だと思ってた
 香菜は逃げたそうにしているが、朱夏はそんなことを無視して叫ぶ。


「あんたになんでそんなこと言われないといけないわけ!? なんであんたなんかに尚のこと諦めろなんて言われないといけないの! 私はずっと尚のこと好きだったのに! なのに、どうしてあんたなんかにそんなお願いされないといけないの? ふざけるのも大概にしてよ! あんたさえいなければ今頃私は尚と付き合えてたはずなの! なのに……なんであんたなんかに、そんな……」


 涙目になりながら、だんだんと声が小さくなっていく。それでも依然と香菜のことを睨み付けている。

 そんな朱夏を見て香菜は目を逸らしてしまう。
 しかし朱夏がそれを許すはずもなく、彼女が目を逸らした方に顔を回り込ませる。それを香菜はまた逸らそうとしたので、朱夏は彼女の顔を掴み、自分の顔を元の位置に戻しこちらから顔を逸らせないようにする。


「目を逸らさないで。ちゃんとこっちを向いて」

「……ごめんね。確かに倉本さんにあんなお願いするのは酷いよね。本当にごめんなさい。でも、私も本当に尚くんのことが好きなの」


 言葉の途中で香菜が朱夏の目を真っ直ぐに見つめる。そして、今までで一番強気に


「だから、倉本さんには絶対に尚くんは渡さない」


 そう言い放った。
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