もしかしたら君が、愛をくれたりして。
お風呂に入り、歯を磨いてからあたし達は、ベッドに入った。
少ししてから彼の手が伸びてきて、親指と人差し指で、あたしの右側のほっぺたを挟んだ。
「って、ちょっと! 春太ったら、また触ってんじゃん!」
「柔らかいもん」
まあ、いつものことだし、どうせ今日も触られると思っていたんだけどんね。
あたしも、手を伸ばして彼の片方のほっぺたを触る。
「って、あーちゃんも俺の触ってんじゃん。別に俺のほっぺは柔らかくないのに、なんで」
「あんたのこと嫌いじゃないから」
「え?」
「好きじゃない人のほっぺなんて、触るわけないじゃん」
「嬉しい。朱莉が、俺のこと嫌わないでいてくれて」
大人っぽく優しく笑った彼。
このまま見ていると、ゆでダコになりそうだ。
「あっ、あたし。もう寝る!」
「あーちゃん?」
あたしは寝息を立てて、寝たふりをし始めた。あたしって、やっぱり素直じゃないな。
だけど、彼にいつかできるかな。
『嫌いじゃない』じゃなくて、
はっきり、
『大好き』と言うことが。