もしかしたら君が、愛をくれたりして。
タルトをかじると、『さくっ』といい音がした。
「ん、美味しい」
そういえば、タルトだけで飲み物がないな。
「そうだ、コーヒーを用意しなくっちゃ」
あたしが席を立つと、
「俺がいれよっか?」
と、春太が言った。タルトまで作ってもらって、コーヒーまでいれてもらう訳にはいかない。大体、ここはあたしの家なんだから、コーヒーくらいは自分でいれないと。
「それくらい、あたしに任せなさい」
「わかった」
あたしは、2つのカップをテーブルに置いて、コーヒーをいれた。
春太は猫舌じゃないので、白い湯気がたったカップを取って、すぐに飲んだ。
「やっぱ、あーちゃんがいれるコーヒーが、1番美味いや!」
「ふふっ」
あたしも、口でふうふう冷ましながら、コーヒーを飲んではタルトを食べた。
バターの香りがする、きつね色をしたさくさくの生地。
きれいな薄黄色をした、甘いカスタードクリーム。
赤くてちょっぴり酸っぱい苺。
懐かしいな。
あたしも春太も苺タルトが好きで、今のと似たようなタルトをお母さんが買ってくれて、2人でよく食べていたんだった。