海の景色が変わる頃には…
うちの学校は毎年11月に合唱コンクールがある。学年ごとに順位が決められ、優勝すると学級費3万円が貰える。

今からLHRで曲を決めの話合いをするらしいけど学級委員をしている凌が教卓の前に立ってテキパキ仕切っている。

凌の顔なんて見たくもない。

別に曲とかどうでもいいし、私は頬杖をついて窓の外を眺めていた。

「じゃあ、澤原さん、お願いしてもいいですか?」

急にそんな凌の声が耳に入って来て前を見ると凌がこっちを見てにっこり笑っている。

「は!?え??何を?」

「澤原お前、玉置の話ちゃんと聞いてなかったのかー!?伴奏だよ!伴奏!」

教室の隅で見ていた先生の声がした。

「え!?いや…無理無理!!」

凌が指揮者なのに伴奏なんて絶対やりたくない。
首を横に振る私を他所に先生は話を進めた。

「お前ら去年も息ぴったりだっだろ?誰も弾けないんだ。よし!!澤原で決定ー!!」


先生がそう言うとみんなが拍手し、凌は「よろしく」と私をみて微笑んだ。

放課後
「ここが職員室でー…ここは保健室!」
私は約束通り高橋に学校を案内していた。

「これで終わりかなー。何か分からないことある?」

「んー…多分大丈夫かなっ!凛サンキューな!」

高橋はそう言うと笑って私の頭をくしゃっと撫でた。

「もー!髪ぐしゃぐしゃになるじゃん!」

「大丈夫大丈夫!お前の髪なんて誰も見てねーって!」
「それどういう意味ー!?」

こんな馬鹿らしいやりとりが妙に心地よかった。
高橋といると気をつかわなくてラクだった。

合唱コンクールで優勝したら3万円は打ち上げに使うらしい。コンクールが近づくにつれみんな自然と練習に熱が入る。そんな中私は練習が憂鬱でたまらなかった。

「澤原さん!伴奏が先走りすぎよ!手元ばかり見ないで指揮者見て!」

「…はい。すみません…」

凌の顔なんて見たくない。毎日毎日この調子で先生に怒られている。日が経つにつれクラスメイトからもため息が漏れる。

「元気だしなよ!伴奏なんて先生が勝手に決めたんだし!」

教室でため息をついた私に由香が話しかけた。

「ねぇ、放課後凛が暇ならストレス発散させに行かない?」
「どこ行くの?」
「カラオケー!発散っていえばやっぱカラオケでしょ!」
「カラオケ!!行く行くー!」

由香と久しぶりのカラオケに少しテンションが上がった。由香も嬉しそうに笑ってくれた。

放課後、由香と一緒にいつものカラオケ入った。受付をしてると後ろから声がした。

「あれー?由香と凛じゃん!」

振り向くとそこには晃と高橋がいた。晃は同じクラスの男子で高橋が転校してきてから2人は仲が良い。

「2人?」

晃が言うと、由香が意地悪そうに「この子最近練習で怒られっぱなしじゃん?だから発散させに来たの!」と答えた。

「何?お前ヘコんでんの!?」

晃がニヤニヤしながら私に聞いた。

「別にぃ~!」

私がプイっとそっぽを向くと
「かわいくねー!つか、こいつがヘコむわけないじゃん!」と高橋が笑った。

せっかく会ったんだし一緒に入ろうという晃の提案で4人で一緒に部屋に入った。
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