海の景色が変わる頃には…
まだ18時前なのに辺りはすっかり暗くなっていて公園の街灯に照らされたけんちゃんはなぜかいつもよりかっこよく見えた。
「もう真っ暗だな!」
「そうだねー。なんかこうやって2人でいられるの幸せだなー。
私けんちゃんの彼女でいれて本当に嬉しいし、今ね、すごく幸せなんだー!学校から一緒に帰ったり遊んだり。この先もずっと一緒にいれたらいいなぁ…」
「…そうだな。」
返事をしたけんちゃんは笑っていたけど気のせいかいつもの笑顔と違う気がした。
「そういえば、今日何か用事あったんじゃないの?けんちゃんが急に呼び出すのめずらしいからさ!」
「あー…うん…。あのさ…俺の親父今K市で単身赴任してるんだけど…
でさ、親父忙しくて休みの日もなかなかこっちに帰れなくて家族ともほどんど会えてない状態なんだ。」
「…うん。」
「この前、優子さんと親父が話したらしくて、その時に親父が家族で一緒にK市に住まないかって言ったらしいんだ。
優子さんは俺が行きたくないんだったら今のままでもいいって言ってくれてて…
だ…大体さー転校なんてありえねーよな!?俺何回転校すんだよって!」
けんちゃんは右手で頭を掻きながらはははと笑ったけどその笑顔は少し無理しているように見えた。何か言わなきゃいけない事は頭では分かっていたけど急すぎて何も考えられず「そうなんだ…」と返すので精一杯だった。
けんちゃんがこの話をしてなんとなく気まずくなった私達はその日はそのまま帰る事にした。
いつものようにけんちゃんが家の前まで送ってくれたけどあまり会話も無いまま「またね」と別れた。
自分の部屋に入ってからもさっきの事が頭から離れなかった。
ずっと一緒にいられると思っていた。
けんちゃんが行きたくないって優子さんに言えば転校しなくてもいい…。
でも本当にそれでいいのかな…。
次の日
由香とひかりちゃんと一緒にカラオケに行く約束をしていた。
フリータイムで入り、2時間ほど歌った後そのまま部屋で少し話をする事にした。
「あー!スッキリした!やっぱカラオケいいね!てかさ、冬休み健太と遊んだ?」
ひかりちゃんが私の方を向いて言った。
「遊んだっていうか…公園で少し話したくらいかな?」
「ケンカしたの?」由香がコーラを飲みながら私に聞いた。
「ううん、ケンカはしてないよ。ただ…けんちゃんが転校するかも…。」
「は!?」
由香とひかりちゃんが目を丸くした。
「何で!?」
私はこの前けんちゃんから聞いた事をゆっくり話した。
「けんちゃんの家族の事を考えると転校した方がいいっていうのは分かってる。
…でも離れたらもうダメになるような気がして…。すごいわがままな考えだって自分でも分かってる。でも…」
眉間にシワを寄せて俯く私の背中を由香が優しくさすってくれた。
「凛、気持ちはすごい分かるよ。離れるのは不安だよね?でも凛の中でどうするのがベストかもう答えは出てるんでしょ?あとは健太と凛の絆の問題じゃないかな?私は、凛と健太なら離れても大丈夫だと思うよ!…ね?ひかりちゃん!」
「うん!私も2人は絶対大丈夫だと思う!もっと自信持ちなよー!」
そう言って笑う由香とひかりちゃんと見てると少しだけ心のモヤが晴れた気がした。
その日の夜、けんちゃんにLIMEを送った。
『話があるんだけど明日、会えるかな?』
♪ピコン
『高橋健太』
返事はすぐに返って来た。
『うん!大丈夫だよ!つか俺も話があるから!』
次の日、待ち合わせのファミレスに10分遅れてけんちゃんが走って入って来た。
「ごめんごめん!裕太が遊ぼうって聞かなくてさ!いつもの作戦使おうと思ったけどあいつ嘘だって気付いたみてー」
「いつもの作戦って何?」
「んー?あー、優子さんが悪い奴に今日誘拐されるらしいから俺は今から外を見回りに行く!裕太は優子さんを守れ!…ってやつ。」
「毎回同じじゃやっぱバレるよー!」私がそう言って笑うとけんちゃんは「やっぱそっか!」と一緒に笑った。
けんちゃんの笑顔を見ると由香達が言ってた通り私達ならきっと大丈夫って気がした。
大丈夫…。
大丈夫…。
「あ!で、けんちゃんの話って何?」
「あー…俺やっぱ転校しねーよ!」
「え!?お父さん帰ってくんの!?」
「いやー、凛と離れんのまじで嫌だから行かね!」
「…。」
「…あれ?もっと喜んでくれるかと思った…。」
「あのね…私…けんちゃんと離れるのはすごい嫌だよ。今までの当たり前が全部当たり前じゃなくなるんだもん。でもね、けんちゃんの家族がそのせいで寂しい想いをするのはもっと嫌なの。…私とけんちゃんなら離れてもきっとやっていけるよ!大丈夫!」
本当は離れるのなんて
すごく怖い。
ずっと一緒にいたい。
涙が出そうなのを必死で堪えて笑顔を作った。
「いや…え…?つか俺が、凛と離れんの嫌なんだけど…。」
けんちゃんのこの言葉に思わず涙が溢れ出しそうになった。
「じゃあ転校しないで」と言ってしまいそうになった私は慌てて俯いた。
俯くと同時に一気に視界がぼやけ堪えていた涙が次から次へと溢れ出して止まらなかった。
「…私も行って欲しくなんかないよ!でも優子さんも裕太くんも…お父さんと一緒にいたいはずだよ?」
「あのさ、本当に…本当ーーーに!俺がいなくても平気なの?」
「…平気なわけないよ!!でもがんばる。LIMEもあるし、きっと大丈夫だよ。」
俯いたまま涙を拭う私の前でけんちゃんは「そっか…。」と一言だけつぶやいた。
帰り道
少しだけ公園に寄って2人でベンチに座った。
「俺さ…ちょっとガキだったわ。ありがとな。」
「いっぱいLIMEくれるなら平気だよ!」
「うん!ウザいくらいする!毎日俺の自撮り送る!」
「えー!それはやだー!」
「はぁ!?お前まじでふざけんなよー!」
そう言ってけんちゃんはいつもみたいに私の頭をぐちゃぐちゃにして笑った。
「ねぇ、凛。」
「ん?」
私が髪を整えながらけんちゃんの方を見るとけんちゃんは両手で私をぎゅっと抱きしめた。
「俺、凛の事すっげーーーー好きだよ。」
「うん…。」
「離れんの、すっげー嫌だ。」
「…。」
「でも凛が言った通り、俺らなら大丈夫だって信じるから…。」
そう言ったけんちゃんはゆっくり私にキスをし、唇をゆっくり離したけんちゃんはもう一度私を抱きしめた。
けんちゃんに抱きしめられて生れて初めて好きすぎて涙が出た。けんちゃんが愛おしくてたまらなかった。
その涙の理由は聞かずにけんちゃんは私を抱きしめながら優しく頭を撫でた。
「大好きだよ。」と耳元でささやくけんちゃんの声に胸がぎゅっと締め付けられる。
想えば想うほど離したくなくなる。離れるのが怖くなる。
「大丈夫だよ」と強がった事を、今更後悔してしまった。
離れたくない…。
「もう真っ暗だな!」
「そうだねー。なんかこうやって2人でいられるの幸せだなー。
私けんちゃんの彼女でいれて本当に嬉しいし、今ね、すごく幸せなんだー!学校から一緒に帰ったり遊んだり。この先もずっと一緒にいれたらいいなぁ…」
「…そうだな。」
返事をしたけんちゃんは笑っていたけど気のせいかいつもの笑顔と違う気がした。
「そういえば、今日何か用事あったんじゃないの?けんちゃんが急に呼び出すのめずらしいからさ!」
「あー…うん…。あのさ…俺の親父今K市で単身赴任してるんだけど…
でさ、親父忙しくて休みの日もなかなかこっちに帰れなくて家族ともほどんど会えてない状態なんだ。」
「…うん。」
「この前、優子さんと親父が話したらしくて、その時に親父が家族で一緒にK市に住まないかって言ったらしいんだ。
優子さんは俺が行きたくないんだったら今のままでもいいって言ってくれてて…
だ…大体さー転校なんてありえねーよな!?俺何回転校すんだよって!」
けんちゃんは右手で頭を掻きながらはははと笑ったけどその笑顔は少し無理しているように見えた。何か言わなきゃいけない事は頭では分かっていたけど急すぎて何も考えられず「そうなんだ…」と返すので精一杯だった。
けんちゃんがこの話をしてなんとなく気まずくなった私達はその日はそのまま帰る事にした。
いつものようにけんちゃんが家の前まで送ってくれたけどあまり会話も無いまま「またね」と別れた。
自分の部屋に入ってからもさっきの事が頭から離れなかった。
ずっと一緒にいられると思っていた。
けんちゃんが行きたくないって優子さんに言えば転校しなくてもいい…。
でも本当にそれでいいのかな…。
次の日
由香とひかりちゃんと一緒にカラオケに行く約束をしていた。
フリータイムで入り、2時間ほど歌った後そのまま部屋で少し話をする事にした。
「あー!スッキリした!やっぱカラオケいいね!てかさ、冬休み健太と遊んだ?」
ひかりちゃんが私の方を向いて言った。
「遊んだっていうか…公園で少し話したくらいかな?」
「ケンカしたの?」由香がコーラを飲みながら私に聞いた。
「ううん、ケンカはしてないよ。ただ…けんちゃんが転校するかも…。」
「は!?」
由香とひかりちゃんが目を丸くした。
「何で!?」
私はこの前けんちゃんから聞いた事をゆっくり話した。
「けんちゃんの家族の事を考えると転校した方がいいっていうのは分かってる。
…でも離れたらもうダメになるような気がして…。すごいわがままな考えだって自分でも分かってる。でも…」
眉間にシワを寄せて俯く私の背中を由香が優しくさすってくれた。
「凛、気持ちはすごい分かるよ。離れるのは不安だよね?でも凛の中でどうするのがベストかもう答えは出てるんでしょ?あとは健太と凛の絆の問題じゃないかな?私は、凛と健太なら離れても大丈夫だと思うよ!…ね?ひかりちゃん!」
「うん!私も2人は絶対大丈夫だと思う!もっと自信持ちなよー!」
そう言って笑う由香とひかりちゃんと見てると少しだけ心のモヤが晴れた気がした。
その日の夜、けんちゃんにLIMEを送った。
『話があるんだけど明日、会えるかな?』
♪ピコン
『高橋健太』
返事はすぐに返って来た。
『うん!大丈夫だよ!つか俺も話があるから!』
次の日、待ち合わせのファミレスに10分遅れてけんちゃんが走って入って来た。
「ごめんごめん!裕太が遊ぼうって聞かなくてさ!いつもの作戦使おうと思ったけどあいつ嘘だって気付いたみてー」
「いつもの作戦って何?」
「んー?あー、優子さんが悪い奴に今日誘拐されるらしいから俺は今から外を見回りに行く!裕太は優子さんを守れ!…ってやつ。」
「毎回同じじゃやっぱバレるよー!」私がそう言って笑うとけんちゃんは「やっぱそっか!」と一緒に笑った。
けんちゃんの笑顔を見ると由香達が言ってた通り私達ならきっと大丈夫って気がした。
大丈夫…。
大丈夫…。
「あ!で、けんちゃんの話って何?」
「あー…俺やっぱ転校しねーよ!」
「え!?お父さん帰ってくんの!?」
「いやー、凛と離れんのまじで嫌だから行かね!」
「…。」
「…あれ?もっと喜んでくれるかと思った…。」
「あのね…私…けんちゃんと離れるのはすごい嫌だよ。今までの当たり前が全部当たり前じゃなくなるんだもん。でもね、けんちゃんの家族がそのせいで寂しい想いをするのはもっと嫌なの。…私とけんちゃんなら離れてもきっとやっていけるよ!大丈夫!」
本当は離れるのなんて
すごく怖い。
ずっと一緒にいたい。
涙が出そうなのを必死で堪えて笑顔を作った。
「いや…え…?つか俺が、凛と離れんの嫌なんだけど…。」
けんちゃんのこの言葉に思わず涙が溢れ出しそうになった。
「じゃあ転校しないで」と言ってしまいそうになった私は慌てて俯いた。
俯くと同時に一気に視界がぼやけ堪えていた涙が次から次へと溢れ出して止まらなかった。
「…私も行って欲しくなんかないよ!でも優子さんも裕太くんも…お父さんと一緒にいたいはずだよ?」
「あのさ、本当に…本当ーーーに!俺がいなくても平気なの?」
「…平気なわけないよ!!でもがんばる。LIMEもあるし、きっと大丈夫だよ。」
俯いたまま涙を拭う私の前でけんちゃんは「そっか…。」と一言だけつぶやいた。
帰り道
少しだけ公園に寄って2人でベンチに座った。
「俺さ…ちょっとガキだったわ。ありがとな。」
「いっぱいLIMEくれるなら平気だよ!」
「うん!ウザいくらいする!毎日俺の自撮り送る!」
「えー!それはやだー!」
「はぁ!?お前まじでふざけんなよー!」
そう言ってけんちゃんはいつもみたいに私の頭をぐちゃぐちゃにして笑った。
「ねぇ、凛。」
「ん?」
私が髪を整えながらけんちゃんの方を見るとけんちゃんは両手で私をぎゅっと抱きしめた。
「俺、凛の事すっげーーーー好きだよ。」
「うん…。」
「離れんの、すっげー嫌だ。」
「…。」
「でも凛が言った通り、俺らなら大丈夫だって信じるから…。」
そう言ったけんちゃんはゆっくり私にキスをし、唇をゆっくり離したけんちゃんはもう一度私を抱きしめた。
けんちゃんに抱きしめられて生れて初めて好きすぎて涙が出た。けんちゃんが愛おしくてたまらなかった。
その涙の理由は聞かずにけんちゃんは私を抱きしめながら優しく頭を撫でた。
「大好きだよ。」と耳元でささやくけんちゃんの声に胸がぎゅっと締め付けられる。
想えば想うほど離したくなくなる。離れるのが怖くなる。
「大丈夫だよ」と強がった事を、今更後悔してしまった。
離れたくない…。